『リープ量子重力』の名づけ親であり、その第一人者でもあるロヴェッリ。
科学史や哲学にも詳しい彼は、複雑な理論を分かりやすく一般向けに解説してくれます。
そして、この本は『科学を学ぶ意味とは何か?』
そんなことを教えてくれる一冊です。
科学が目まぐるし発展を遂げたのは人類の歴史から見ると最近の出来事。
17世紀初頭、ガリレオが物体を自由に落下させるという人類史上初めて「実験」を行い、加速度が全ての物体にとって等しいことを証明しました。
実験的科学というものはガリレオと共に始まったのです。
ここからニュートンが重力を、ファラデーとクラークは電磁場の存在を提示し、マスクウェルが電気と磁気の仕組みを明らかにしました。
そして、アインシュタインがそれらをまとめ特殊相対性理論を提唱し、さらには一般相対性理論を完成させたのです。
この世界は場と粒子でできている。
アリストテレスの哲学にもとづく世界観は、根底から覆されていき、デモクリトスの想像した世界の方が正しかったと証明されました。
作者はかなりのデモクリトス推しです。
科学とは突然ポンと新しいことが生まれるわけではありません。
皆様のイメージではいきなりすごい発見や発明、考えが生まれてきて、科学が発展してきたと思われている方も多いかもしれません。
しかし、アインシュタインもニュートンも先人たちが積み上げてきた過去の実験結果を元に、それらを合わせても矛盾しないような案を考え、それを証明したのです。
エジソンだってそうです。
人類が積み上げてきた経験があったからこそ、新たなものがどんどん生まれてきたわけです。
つまり、言い換えれば新たな発見は過去の研究の中に隠されているということ。
また、誰かが思いつき証明したものを理解することは比較的簡単です。
しかし、誰も思いつかなかったことを考え、それを理解することが最も難しいことなのです。
私たちは勉強という形で教育を受けていますが、それらは全て先人たちの財産であり、学ぶということは新しいものを生み出すことに繋がるということです。
学ぶということはどういうことなのか?
大事なことです。
この本にはアインシュタインがどのように一般相対性理論を完成させたのか、今量子力学で世界がどこまで理解されているのか、科学の歴史から考え方までが書かれています。
きっと読むことで、もっと物理が科学を勉強したいと思うこと間違いありません。
本を読んでみて
本当に科学をもっと学びたいと思わせてくれる一冊だと思います。
アインシュタインがどれだけすごかったのかが改めて思い知らされました。
彼はなんと25歳にして特殊相対性理論を完成させ、26歳で発表しているのだから驚きです。
私もちょうど26歳なので怖いですね。
また、それと同時にブラウン運動から原子の大きさを決定し、光量子仮説も同時に発表。
一体どんな世界を見ていたんでしょうか。
また、古典物理学では示すことができない小さな世界。
これを表わす量子力学についてもどのように誕生したのかがこの本では言及されています。
物理を使えば、私たち人間は目に見えないことをも、実際には実験できないことも計算し、予測することができます。
しかし、それは真っ暗な深い洞窟の中にいながら外の世界を予想するようなもの。
わからないことだらけだし、間違いだらけでもあるのです。
今の科学が絶対正しいとは限りません。
100年後にはさらに科学が発展し、常識が覆されている可能性だってあるのです。
まだまだ、科学とは未完成な存在。
これからの科学の発展が楽しみですよね。
宇宙もわからないことだらけで魅力的。
次回は宇宙の本を紹介します。
本の詳細
『すごい物理学講義』
2017年5月30日 初版
カルロ・ロヴェッリ 著
竹内薫 監訳
青木邦哉 監訳協力
栗原俊秀 訳者
岩瀬聡 装幀者
小野寺優 発行者
株式会社 河出書房新社 発行所