激しい運動をした後、筋肉痛になったという経験が皆様にもあると思います。
普段運動していなかったりした方が、ちょっとした運動をしたり、普段使わない筋肉を使った時によくなりますよね。
私もフルマラソンを走った後は筋肉痛で動けなくなってしまったことがあります。
では、そんな筋肉痛はどうしてなるのでしょうか?
実はその発生原因にはいくつかの説が存在し、完全にメカニズムが解明されているわけではないのです。
こんなに身近な現象なのにびっくりですよね。
今回はそんな説の中でも有力な物を紹介していこうと思います。
と、その前に筋肉についてお話していきましょう。
1.筋肉
私たちは歩いたり、手をあげたりするだけでなく、血液を循環させたり、息をするのにも筋肉を動かしています。
筋肉が無ければ、生きることすらできません。
そんな筋肉は大きく横紋筋と平滑筋に分けられ、さらにその中でも自らの意志で動かすことができる随意筋と不随意筋に分かれます。
随意筋は手をあげたり、足を動かしたりするときなどの骨格を動かすために使われる筋肉です。
この随意筋は収縮が早く、力強いですが、その分疲労しやすいという特徴があります。
一方、不随意筋はと言うと、心臓や内臓などの臓器がそうであり、疲労しにくいのです。
心臓や内臓などが疲れてしまったら困りますよね。
そして、そんな筋肉は筋原繊維がまとまった筋繊維の束でできています。
筋原繊維の成分はアクチンとミオシンというタンパク質であり、繊維状のフィラメントを構成しているのです。
また、Z膜からZ膜の間を筋原繊維の構造単位とし、サルコメアと呼んでいます。
図中の明帯とはアクチンフィラメントのみの場所であり、暗帯はミオシンフィラメントとアクチンフィラメントが重なった部分を示します。
2.筋肉の収縮
では、筋肉はどのように収縮しているのでしょうか?
簡単に説明すると下図のように、ミオシンフィラメントの間にアクチンフィラメントが滑り込むことで筋収縮が起こります。
このような筋収縮のことを滑り説と言います。
もう少し収縮について詳しく説明しましょう。
少し難しいので読み飛ばしていただいても大丈夫です!
まず、神経からの神経伝達物質により、筋細胞の細胞膜が興奮します。
すると、その興奮は筋原繊維を覆っている筋小胞体へと伝わり、Caイオンが放出されます。
そのCaイオンはアクチンフィラメントに巻きついたトロポニンへと結合し、ミオシン頭部がアクチンフィラメントに結合できるようになります。
ここでATPがミオシン頭部に結合し、分解されるとミオシンの頭部が持ち上がり、アクチンフィラメントに結合します。
ここからミオシンがアクチンフィラメントをたぐりよせることで筋収縮が起こるのです。
少し難しい話になりましたが、そろそろ本題へと向かいましょう。
3.筋肉痛になるのはなぜ?
現代の科学をもってしてもまだ筋肉痛がなぜ起こるのか?ということは完全には解明されていません。
昔は疲労物質であると考えられていた乳酸に原因がある!とされていたのですが、そもそも乳酸は疲労物質ではないということが明らかになりましたし、この説は今では支持されていません。
現在、もっとも有力な説とは、筋肉の損傷による炎症が原因であるというものです。
激しい運動などをすると、筋肉を構成する筋繊維や、それらを束ねる結合組織に傷がついてしまいます。
すると、それらを修復するために血液成分が集まってきて、刺激物質が生産されるので、その刺激物質のせいで痛みを感じるのです。
そんな筋肉痛はすぐにくる場合と遅い場合がありますよね。
これは普段から使っている筋肉では毛細血管が発達しているので、すぐに損傷を治すことができますが、使っていない筋肉では血液成分が傷に到達するのに時間がかかるため、遅れて筋肉痛がやってくるのではと考えられています。
また、歳をとると筋肉痛が遅れてやってくるということが良く言われていますが、これは医学的には間違いとされており、歳を取ると純粋に激しい運動をしないし、普段筋肉を使わないので、遅れてくるだけであるとされているのです。
このように筋肉痛は筋肉の損傷が原因であるとされているので、縮んでいる筋肉が急激に伸ばされた時などに起きます。
ダンベルを持ち上げたり、スクワットで膝を曲げたりするときには注意が必要ですね。
いきなり、無理な運動は危険ですし、筋肉を壊すと太くなるとも言われますが、筋肉痛を起こさなくても筋肉は太くすることができます。
筋肉痛を起こさないように自分にあったトレーニングが大切ですね。
4.さいごに
ここまで筋肉痛になるのはなぜなのかを紹介してきましたが、あくまでこれは現在もっとも有力な説でしかありません。
筋肉痛が起きている筋肉を観察したところ、わずかな筋繊維の損傷しか確認されなかったなどという研究もあり、筋繊維の損傷が筋肉痛の原因ではないのではないか?という説も存在しています。
筋肉は本当に身近な存在ですし、こらからさらに科学が進み、筋肉通のメカニズムが解明される日が来て欲しいですね。
できることなら筋肉痛にはなりたくないですから。
【乳酸の記事】