人は水中では呼吸はできません。
なぜなら肺に水が入ってしまうと、酸素を取り込めず、溺れ死んでしまうからです。
しかし、海や川で水中に潜った時、溺れずに水の中をすいすい泳ぎ回っている様々な生き物を、目にすることができると思います。
魚たちは水中でも呼吸できているではないですか!
本当に魚たちが気持ちよさそうに海の中を泳ぐ姿はうらやましいですよね。
人間は水中では呼吸できないのに、なぜ、魚は水中でも呼吸ができるのでしょうか?
その答えを簡単に言えば、人間と魚とでは呼吸の仕方が違うからです。
『人間は肺呼吸』で『魚はえら呼吸』
それぞれが環境に適した呼吸の仕方をしています。
人間は陸上、魚は水中ということです。
そんなことを言われても肺呼吸、えら呼吸ってなんだよ!
今回は、そもそも何故、呼吸をしなければ生きていけないのか?
というところから、肺呼吸と、えら呼吸の違いについて説明していきたいと思います。
1.何故、生き物は呼吸しなければいけないのか?
呼吸とは酸素を取り込み、二酸化炭素を排出することですよね。
私たちは普段、無意識に呼吸をし、酸素を体に取り込み、二酸化炭素を排出しています。
イメージ無いかもしれませんが、酸素は本来、強い酸化性を持ち、毒性を持つ危険な気体なのです。
太古の地球では酸素が多すぎて地上で生命が生きれない状態の時もあったくらい。
例えば良く耳にする過酸化水素などの活性酸素は細胞を傷つけ、老化を促進させると言われていますよね。
ではなぜ、このような危険な酸素を、わざわざ体に取り組む必要があるのでしょうか?
また、取り込んだ酸素をどのように使っているのでしょうか?
細菌や一部の生物(微生物など)は酸素を使わず生きていますが、私たち人間を含む、多くの生物は酸素が無ければ生きていくことはできません。
何故、酸素がないといきていけないのか?
この答えにはエネルギーが関係しています。
体を動かしたり、生きていくためにはエネルギーが必要です。
このエネルギーを合成するために酸素が必要なのです!
このエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれています。
代謝や合成、生きる上で様々なところで必要になってくるので、ATPは生体の生体のエネルギー通貨とも呼ばれています。
つまり、エネルギーを合成するために酸素が必要であるから、生き物は呼吸しなければいけないのです。
ん?ちょっとまてよ!
排出している二酸化炭素はどこから出てきたんだよと思うかもしれません。
それにはエネルギー(ATP)をどのように合成するかを知る必要があります。
では、エネルギー(ATP)はどのように合成されているのでしょうか。
2. エネルギー(ATP)の合成
呼吸によって得られた酸素は、肺で吸収された後、血液によって体中に運ばれていきます。
運ばれてきた酸素は最終的に、各器官の細胞内にある『細胞基質』の『ミトコンドリア』にやってきます。
そして、ここで酸素を使い、エネルギー(ATP)が合成されるのです。
このATPを合成する反応はまとめて名前がついています。
『クエン酸回路』と『電子伝達系』です。
この反応は高校生物でも習います。
この反応をまとめて化学式で表すと、
C₆H₁₂O₆ + 6O₂ + 38ADP + 38Pi → 6CO₂ + 6H₂O + 38ATP
と表すことができます。
少し難しいですが、化学式をよく見てください!
炭素を持つ化合物である炭水化物(C₆H₁₂O₆)に酸素を足して(酸化)、水(H₂O)と二酸化炭素(CO₂)を出しながら、エネルギー(ATP)を合成しています。
呼吸とは酸素を取り組み、二酸化炭素を排出することであると先ほど言いました。
エネルギー(ATP)を作る時には、酸素が必要で、二酸化炭素ができます。
つまり、酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する呼吸をしなければいけないのです。
エネルギーを合成するために呼吸していたんですね!
では、人と魚の呼吸は何が違うのでしょうか?
3.肺呼吸とえら呼吸
爬虫類、鳥類、哺乳類は肺呼吸です。
一方、魚類、水棲甲殻類はえら呼吸をしています。
両生類は幼生時にはエラ呼吸を行い、成長して生体時には肺呼吸に変わります。
このように両方利用生物もいれば魚の中にも肺魚といわれる浮袋を持ち、肺呼吸に近い呼吸をする魚もいます。
肺魚なんかは生きた化石とよばれ、生物が陸上へと進出した進化の過程を示す証拠であるとも言われています。
他にも生物によって違ってきます。
呼吸に関しても一概には言えないのです。
では肺呼吸とえら呼吸の違いは何なのでしょうか?
肺呼吸は空気中の酸素を取り込んでいます。
一方で、えら呼吸は水中に溶けている酸素を、取り込んでいるのです。
では、それぞれについて詳しく説明していきましょう。
4.肺呼吸
人を含む陸上で肺を使い呼吸をする生き物は酸素を吸収し、二酸化炭素を放出しています。
この肺には沢山の『肺胞』が存在しています。
肺胞が空気中の酸素を取り込み、二酸化炭素を排出しているのです。
この肺胞には毛細血管が張り巡らされており、血液中の『ヘモグロビン』が酸素を受け取ることで、体中へと酸素を運ぶことができます。
ヘモグロビンは酸素を受け取った時には逆に、二酸化炭素を離しています。
ヘモグロビンは酸素濃度が高い場所では酸素と結びつき、二酸化炭素を離します。
一方で、酸素濃度が低いところでは酸素を離し、二酸化炭素と結びつくという特徴があります。
このヘモグロビンの特性利用し、酸素をうまく取り込んで二酸化炭素を排出しているというわけです。
また、肺胞は沢山あることで表面積を増やしています。
表面積を増やすということは空気に沢山触れることができるということです。
いっぱい触れれた方が酸素を沢山取り込めますよね。
このように肺は表面積を増やすことで、効率よく酸素を取り組んでいます。
肺呼吸では入り口も出口も同じです。
そのために、空気を入れたら、出さなければなりません。
つまり、常に呼吸運動をしなければいけないのです。
私たちは無意識のうちに吐いては吸って、吐いては吸ってを繰り返していますよね。
では、えら呼吸は肺呼吸とどう違うのでしょうか?
5.えら呼吸
えら呼吸でも基本的にはヘモグロビンを利用しているというところは同じです。
ヘモグロビンを利用し、酸素を取り込み二酸化炭素を放出しています。
ただ、エビやカニなどの節足動物やタコやイカなどの軟体動物は、『ヘモシアニン』を利用しています。
酸素と結びつく作用は同じですが、ヘモグロビンは赤色、ヘモシアニンは酸素と結びつくと青色になります。
ようするに血液の色が違うのです。カブトガニの青い血なんかは有名ですよね。
そして、えら呼吸が肺と違うのは、空気中の酸素を取り込むのではなく水中に溶けた酸素を取り組むということです。
なので、魚は水がない陸上では呼吸できずに死んでしまいます。
人間とは逆ですよね。
例外として一部の生物はえらに水分を貯めることができ、しばらく陸上でも過ごすことができる種類もいますが、、、
つまり、今回の大きな議題であった『どうして人間は水中で呼吸ができないの?』その答えは以下のようになります。
人間はえらを持っておらず、空気中の酸素を取り込むことはできても水中の酸素を取り込むことができないので、水中では呼吸できない。
になります。
6.さいごに
水中で呼吸出来たらどんなにいいかとよく思いますが、水中の酸素を回収する人工エラを開発しようという試みもされているみたいです。
しかし、人間は魚よりも多くの酸素が必要になるため、なかなか難しいかもしれません。
ガスボンベを背負わずに海の中を進めるなんて夢がありますよね。
ドラえもんの道具とかででてきたような、、、、、
今後のさらなる科学の発展が楽しみです!
また、陸上に住む生き物は肺呼吸ばかりではありません。
昆虫たちは肺の代わりに気管という呼吸器が発達しています。
大きな動物は肺呼吸で体に酸素を循環させる器官を持たなければいけませんが、小さければ、昆虫のように器官で酸素を取り込むこともできるのです。
その代わり、昆虫は大きさに制限がかけられていますがね。
太古の地球の大気では、今よりも酸素濃度が高かったので、巨大な昆虫がいたんですよ!
今の酸素濃度では今以上には大きくなれないのです。
生き物たちの身体は本当におもしろいですね。