海ぶどうと言えばグリーンキャビヤとも呼ばれ、プチプチした食感と塩味が美味しいお酒のお供ですよね。
今回はそんな海ぶどうの衝撃的ニュースを耳にしましたので、ご紹介させていただきたいと思います。
なんと『海ぶどうは単細胞生物である』というのです。
そんな馬鹿な!!??
根のような部分もあるし、茎のような部分ももっている海ぶどうがミドリムシなどと同じ単細胞生物だと?
初めは私もフェイクニュース的な何かかなと思ったんですが、どうやら本当なのです。
1.海ぶどう
そもそも海ぶどうとは沖縄県や鹿児島県で呼ばれている通称であり、和名はクビレズタです。
イワズタ科イワズタ属に属する海藻であり、日本では南西諸島を中心に、東南アジアからオセアニアあたりの浅い海に生息しています。
長さは2~5 mほどにもなり、葉、茎、根に相当する直立枝、ほふく枝、仮根枝を持っています。
ちなみに私たちが食べているのは直立枝の部分です。
2.海ぶどうは単細胞生物?
なんと、この2~5 mになる全体が1つの細胞なのです。
沖縄科学技術大学院大学の佐藤教授らは海ぶどうの全ゲノムを解読し、その体作りのメカニズムの一端を解明し、DNA Reserch誌に発表しました。
海ぶどうは大きな細胞の中にたくさんの核を持っています。
1つの細胞の中で核が分裂し、細胞自体は分裂しません。
葉や茎、根に相当する部分でそれぞれ多数の核をもっているのです。
そして、海ぶどうは他の緑藻に比べ、核膜の制御タンパク質や転写因子が多様化しており、それぞれの部分でこれらを使い分けることで、単細胞でありながらも複雑な体を作り上げることができると考えられます。
核膜の物質輸送に関わるタンパク質の遺伝子は他の緑藻では10種類以下ですが、海ぶどうは17種あり、葉と茎ではその発現量が異なっていたのです。
また、遺伝子の転写を制御し、切り替えるスイッチとなるTALE型ホメオボックス遺伝子は他の緑藻は2~3種類のところ、海ぶどうでは8種類と多様化していました。
それぞれの場所において、核膜の形を変え、これらの多様な転写因子などが核の中へと入ったり入らなかったりすることで使い分け、複雑な体を作り上げているとのことです。
しかし、まだまだ謎は多く、核がなぜ自分のいる場所を認識しているのか?
なぜ多細胞にならず、多核単細胞になったのかということは明らかになっておらず、これから研究が進められていくはずです。
3.さいごに
身近な存在である海ぶどうが単細胞生物であるということはたいへんな驚きではないでしょうか?
居酒屋やスーパーで見かけた時はぜひ、こいつは単細胞生物だ!と噛みしめてください。
<参考資料>
日経サイエンス 6月号 2019年6月1日
「海ぶどうの形作りの謎に迫る – 全ゲノムの解読によって明らかになったこと」有本飛鳥 2019.5.28