6月20日、英科学雑誌ネイチャーの電子版に「構造色」の論文が掲載されました。
この論文を投稿したのは、京都大学アイセムスのシバニア・イーサン教授と伊藤真陽特定助教らの研究グループ。
大きさ1mmしかない世界最小サイズの葛飾北斎「神奈川沖浪裏」をインクを使用せず、フルカラーで印刷に成功したのです。
その写真はこの記事最下部の【参考資料】のリンクよりお確かめください。
インクを一切使っていないのにフルカラーですよ!
すごくないですか?
ということで、今回は構造色とは何かを解説していこうと思います。
1.身近な構造色
構造色はとても身近なところに溢れています。
例えばシャボン玉を見たことがありますか?
シャボン玉は見る角度によって様々な色が見えるはずです。
これは、シャボン玉の膜が2層になっており、外側の表面で反射する光と、底面で反射する光があり、その2つの光が強め合う(干渉)ことで起こっています。
波長(色)によって屈折率が異なるため、このようなことが起こるのです。
つまり、見る角度が違ったり、場所によって膜の厚さが変わるので、様々な色が見えるわけですね。
また、構造色は生き物たちにも存在しています。
2.生き物たちの構造色
シャボン玉は2層の膜が作り出す薄膜干渉とよばれ、色のつき方は弱いです。
しかし、膜が何層にも積み重なることで、色付きが強くなります。
これは多層膜干渉と呼ばれ、タマムシやクジャク、ハトなどの生き物たちがこの構造色を持っています。
色素によって色が見えるわけではないので、このような色は生き物たちが死んでしまっても輝きを失うことはありません。
タマムシは奈良の法隆寺にある国宝に指定されている玉虫厨子が有名ですよね。
また、蝶の鱗粉も構造色であり、モルフォチョウの美しい青色は特に有名で、よく研究されています。
3.OM技術
透明なプラスチックの定規や下敷きを曲げているとどうなってくるでしょうか?
少し曇ったようになってしまいますよね。
まさにこれを上手く利用したのが今回の研究。
アクリル樹脂などのプラスチックに圧力がかかると、亀裂が生じ、細い繊維(フィブニル)ができます。
この繊維ができる作用を「クレージング」と言い、このクレージングを上手く調節することで、特定の色を反射する素材を開発しました。
この技術がOM(Organized Microfibrillation:組織化したミクロフィブリゲーション)です。
OM技術によって画像解像度数が14000 dpiまでの大規模なカラー印刷をインク無しで行うことができました。
この技術はこれからお札の偽造防止や様々なところで応用が期待されるとのことです。
4.さいごに
インクを使わずしてフルカラーとはとてもすごいですよね。
これからもっと一般的になっていくことは間違いないでしょう。
OM技術は今回研究に使用されたプラスチックの1種であるポリカーボネートだけでなく、金属などでも応用できる可能性もあるそうです。
そうなれば車の塗装や建物の塗装などにも大きく利用されるかもしれませんね。
将来的にはペンキやインクが減ってくるかもしれません。
<参考資料>
京都大学HP
(http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/190620_1.html)