2019年9月13日、イグノーベル賞の受賞者が発表され、去年に引き続き日本人が受賞が決定し、13年連続の受賞となりました。
イグノーベル賞は1991年に創設された『人々を笑わせ、そして考えさせてくれる業績』に対して贈られる賞で、ノーベル賞のパロディバージョンであり、今年は医学、医学教育学、生物学、解剖学、化学、工学、経済学、平和、心理学、生物学の全10項目の賞が与えられました。
そして、今回日本人が受賞したのは化学賞で『一般的な5歳児の1日の唾液の総分泌量をはかった研究』に対してです。
化学賞以外にもユニークな実験はもりだくさんです。今年もどんな研究があったのかというのを簡単に説明していこうと思います。
去年の記事⇩
1.医学賞
ピザを作りかつ摂取した場合、病気と死を予防できることがあることを示す証拠を集めた研究に対して贈られました。
様々ながんを患っている患者や心筋梗塞者などのピザの消費量を調べ、ピザの消費が多い方が食道がんや咽頭がんなどの患者数が少ないことをしましました。
ただ、これは地域によって異なり、アメリカなどでは見ることができませんでした。
著者はイタリアの食にはトマトや、オリーブオイルなどのリコピンが含まれるものが多いからではないかと推測しています。
ピザを食べれば癌のリスクを一概に減らせるとは言えないようですね。
論文⇩
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ijc.11382
https://www.nature.com/articles/1601997
https://journals.lww.com/eurjcancerprev/Abstract/2006/02000/Pizza_consumption_and_the_risk_of_breast,_ovarian.12.aspx
2.医学教育学賞
指慣らしトレーニングによる、単純な動物用訓練技術を用いて、整形外科手術をする外科医をトレーニングしたことに対する研究について贈られました。
犬などを訓練するときにかちかちと音を鳴らし、合図に使います。
これをクリッカー法と言うのですが、このかちかちという音が聞こえると犬はお座りや伏せなどを反射的に行うようになります。
このクリッカー法を外科医手術を学ぶ医学生たちに用いたところ、結び目や穴あけなどの作業で好成績を残すことができたそうです。
まさに体で覚えるといったところでしょうか。
論文⇩
https://link.springer.com/article/10.1007/s11999-015-4555-8
3.生物学賞
死んだたゴキブリと生きたゴキブリを磁化すると、異なる振る舞いをすることを発見した研究に贈られました。
多くの生き物は磁場を感知できるといわれています。ウミガメが自分の産まれた砂浜へと正確に戻ってくることができるのもそのおかげです。
このような生き物たちの体内には何らかの磁性物質が存在していると考えられますが、詳細については未だに明らかとなっていません。
研究では「磁気緩和測定」を用い、磁性体の性質を調べました。
この磁気緩和測定とは、強い磁場を試料にかけることで、磁化の様子や時間変化を調べるというもうのです。
ワモンゴキブリに磁気緩和測定を行ったところ、死んでいるゴキブリと生きているゴキブリでは明らかな差が見られたそうです。
死んでしまうと磁性体が存在すると考えられる細胞内の水分量が少なくなり、磁性粒子を取り巻く環境の変化でこの差が見られたのではないかということです。
われわれ人間も昔は磁場を感じることができた可能性があるそうですよ!
今は無理ですけど、、、
論文⇩
https://www.nature.com/articles/s41598-018-23005-1
4.解剖学賞
フランスの郵便配達員たちが裸の時と服を着たときの陰嚢の温度を計測し、その非対称性を示したことについての研究に贈られました。
今までは右側よりも左の方が温度が高い!もしくは、同じであると言われていました。
しかし、今回の研究で左の方が優位に高いことが明らかとなったのです。
裸の場合にはそれほど差は見られなかったものの、服を着た状態では着ているものに関係なく有意差が見られたそうです。
なんでなんだろうね。
論文⇩
https://academic.oup.com/humrep/article/22/8/2178/643997
5.化学賞
一般的な5歳児の1日の唾液の総分泌量を計った研究について贈られました。
5歳の男児15人、女児15人にクッキーやリンゴ、ご飯などを咀嚼させて、飲み込ませずに吐き出させ回収するという手法を取りました。
男女差は見られず、1日の分泌量はおよそ500 mLであったそうです。
嫌がる子供たちにご褒美をあげることで、研究を実現させたそう。
う~ん5歳児が良く飲み込まずに吐き出したなと思いますね。
論文⇩
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/000399699500026L?via%3Dihub
6.工学賞
乳幼児用のおむつ交換機を発明したことに対して贈られました。
こちらは研究論文ではなく、2018年アメリカで取得した特許に対してです。
洗濯機みたいな装置ですw
7.経済学賞
どの国の紙幣が危険な菌を伝播するのに効果的かを検証した研究に対して贈られました。
黄色ブドウ球菌や大腸菌、バンコマイシン耐性腸球菌などの細菌を各国の紙幣に付着させ、表面の細菌が時間とともにどう変化するかを調べました。
ルーマニアのお金が最も菌を伝播し、材質によって異なることが明らかになりました。
お金の材料も衛星の面から見るのも良さそうですね。
https://aricjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/2047-2994-2-22
8.平和賞
痒みをかくことで得られる快楽を測定しようとした研究に対して贈られました。
まず、痒みを引き起こす酵素を持つハンショウマメを使用して、被験者の足首、首、前腕に痒みを引き起こします。
そして痒い所をブラシでかいてもらい、数値化してもらうというもの。
結果としては、背中をかいた時が一番気持ち良かったそうです。
また、足首は一番痒みを感じたとのこと。
痒みを引き起こす酵素とかあったんですね!!
論文⇩
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1365-2133.2012.10826.x
9.心理学賞
ペンを口にくわえると人の表情が笑顔になり、その笑顔で気分が幸せになるということを発見したと思いきや、それは間違いであったことを発見した研究に対して贈られました。
1988年、ストラック氏はペンをくわえ口元が吊り上がり笑顔に似せた表情になると、脳が笑顔であると誤認しその状態で読んだ漫画は面白くかんじるという結果を発表しました。
この実験はプライミング効果としての実例として取り上げられ、本家ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが自身の著書で紹介したほどです。
プライミング効果とは、先に与えられた刺激により、後の刺激に無意識のうちに影響が出る現象のことを言います。
しかし、ストラック氏自ら2017年に行われた追加実験によると、ペンをくわえた状態の方が漫画は面白いという結果は出ず、実は間違っていたということが明らかになったのです。
自らの結果すらも疑ってしっかりと検証することってとっても大事ですね。
論文⇩
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2017.00702/full
10.物理学賞
このかわいらしいウォンバットがなぜ、どのようにして立方体の糞をするのかを研究したことに対して贈られました。
オーストリアに生息するウォンバットは1辺約2 cmの立方体の糞をします。
交通事故などで亡くなったウォンバットを調べたところ、食べたものが液状となり、腸の後半で立方体となるそうです。
ちょっと僕はいまいち理解できなかったんですが、皆様はどうでしょうか?
それにしても糞が立方体になるのは神秘というかすごいですよね。
論文⇩
http://meetings.aps.org/Meeting/DFD18/Session/E19.1
11.さいごに
今年のイグノーベル賞もユニークなものばかりですよね。
心理学賞なんかは特に面白いのではないかと。追加実験してみると実は違いましたって、、、、
日本人は13年連続の受賞となったわけですが、イグノーベル賞には日本人とイギリス人が多いそうです。
研究の傾向なのか文化なのか、意外と日本人は個性豊かな人が多いのかもしれません。
イグノーベル賞の歴史を見てみると、疑似科学などに皮肉を込めて賞が贈られたこともありました。
しかし、最近では人気が上がり、あまりそのようなことはできなくなってきているのかもしれません。
受賞は果たして光栄なことであるのか?これからのイグノーベル賞の立ち位置も気になるところです。
皆様はどう思いますか?
また、来年も日本人は受賞するのでしょうか?来年も楽しみですね。