ストレスがかかると白髪が増えるとよく言われていますが、その科学的なメカニズムは明らかとなっていませんでした。
しかし、2020年1月22日、ハーバード大学 再生生物学教授であるYa-Chien Hsu 博士らがNatureにストレスが色素幹細胞を減少させることを明らかにした論文を投稿しました。
1.色素幹細胞
色素幹細胞は毛の色素を作るメラニンを作っているメラノサイトの前段階の細胞であり、色素幹細胞はコラーゲンを生み出す毛包幹細胞と共に毛包幹細胞ニッチと呼ばれる場所に存在しています。
そして、この色素幹細胞は老化とともに減っていくので、老化で白髪が増えるのはこのためです。
メラノサイトはメラニン細胞とも呼ばれ、血液のチロシンよりメラニン色素を生成しているのです。
今回の研究ではこの色素幹細胞とストレスの関係が明らかとなったのです。
2.ノルアドレナリン
ストレスがかかると交感神経が刺激され、神経伝達物質の1つである「ノルアドレナリン」が放出されます。
ノルアドレナリンは心拍数を上げたり、筋肉が早く動くように働くのですが、毛包幹細胞ニッチでは色素幹細胞を活性化させ、メラノサイトへと分化を促す働きをするのです。
そのため、ストレスがかかるとどんどんメラノサイトへと変わっていき、色素幹細胞が減ってしまい、メラノサイトが作れなくなってしまいます。
その結果、メラノサイトが枯渇し、髪の毛が白くなってしまうのです。
このことはマウスにストレスを与え、白髪が増加したこと、そして、色素幹細胞のノルアドレナリン受容体ノックアウトマウスの実験により明らかとなりました。
この研究はあくまでマスクのものであるため、人間の色素幹細胞も同じであるという直接的な証拠はまだ無いということは注意しなければいけないところです。
3.さいごに
色素幹細胞にノルアドレナリンの受容体が存在し、影響をあたえるのであれば、他の幹細胞にも同様のことが言える可能性があります。
他の身体の部位にストレスが与える影響を解明するのにとても役立つ研究であることは間違いありません。
ストレス社会と言われている現代、なるべくストレスのかからない環境を作るということが大切なのかもしれませんね。
今の状況は特にストレスが多くかかる状況かもしれません(2020.4.19)。頑張って乗り切りましょう!
<論文>
Ya-Chien(2020)Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells Nature 577,676-681
https://www.nature.com/articles/s41586-020-1935-3