今回紹介する本は『生き物の死にざま』です。
この本はとても詞的で、『生きること』そして、『死』についてとても考えさせられる一冊となっています。
生きているということは常に『死』が隣り合わせにあるということ。そんな生き物たちが死ぬとき、何を思うのか?
生き物たちはみな、異なる人生を歩み、人間には考えられないような死を遂げることがあります。
我が子の犠牲になる者。種族の繁栄のために自らの命を捧げるもの。ただひたすらに漂い、食べられるもの。
そんな生き物たちの死にざまを想像すると、生きるということに正解なんか無いんじゃないのか。生きる意味というのは人それぞれで、自分に合った生き方がきっとあるんだと思わされます。
生きていること自体が素晴らしい。きっとそうなんだ。
もっともっと生き物たちの姿を私たち人間は見なければいけないんだと感じます。
この地球で人間は好き勝手生きています。しかし、地球は人間だけのものではありません。生き物たちすべてのものなのです。
本を読んでみて….
この本を読み、私の中で一番衝撃だったのはチョウチンアンコウのお話です。
チョウチンアンコウは深海に生息し、餌を頭部から出ている発光する誘因突起でおびき寄せ捕獲することで有名な魚で、ご存知の方も多いと思います。
その生態はまだほとんど明らかとなっていないのですが、チョウチンアンコウの雄がとても特徴的なのです。
チョウチンアンコウの雄と雌は大きさが大きく異なり、雄は成長しても4 cmにも関わらず、雌は40 cmほどに成長します。その差はなんと10倍。
そして、そんな雄は驚くべきことに雌と出合うとその体に噛みついて、雌の体から体液を吸収し、養分をもらって暮らすのです。
捕獲された当初は、雌が何かの生物に寄生されていると考えられたのですが、調査が進むにつれて雄ということが分かってきました。
そうしていくうちに雄の体は退化し、ヒレや眼さえも失ってしまいます。最終的には内臓も退化していき、子孫を残すための精巣だけを発達させていくのです。
雄は雌と同化し、自らは精子を供給するだけの存在となって、雌と共に生き、死んでいきます。
チョウチンアンコウの雄の生き方を知ってあなたは何を思いますか?
紐でしかない雄は情けないのか?それても雄としての役割を立派に果たすすばらしい死にざまなのか?
少なからずとも彼らはこの行動によって生き残っているということは揺るがない事実です。
この本にはまだまだ生き物の魅力的な死にざまが描かれています。ぜひ、読んで生きるとはどういうことかを考えてみてはいかがでしょうか?
本の詳細
『生き物の死にざま』
著者 稲垣栄洋
イラスト わたなべひろみ
デザイン 大野リサ
発行者 藤田博
発行所 株式会社草思社