スポーツをした時によく使う言葉があると思います。
「アドレナリンめっちゃでてたわ!」
「アドレナリン出てたから痛いのに気づかんかったわ!」
関西弁が半端ないですが、このように運動時や運動後に、『アドレナリン』という言葉を使う方も多いのではないでしょうか?
では、このアドレナリンとはいったい何ものなのでしょうか?
アドレナリンのイメージとしては、運動時に体に働くものというような感じだと思います。
今回は日常的にも使われるアドレナリンについて解説していきます!
1.アドレナリン
アドレナリンはこのような構造をもつ物質です。⇩
C₉H₁₃NO₃
腎臓のそばには副腎という器官があり、この副腎からは様々なホルモンが分泌され、体の状態を整えてくれているのです。
そして、この副腎から分泌されるホルモンの1つに、アドレナリンがあります。
また、このアドレナリンが分泌されると神経伝達物質として働き、交感神経を働かせるのです。
では、交感神経を働かせるとはどういうことなのでしょうか?
2.自律神経
人の抹消神経には自分の意志で体を動かすことができる体性神経と、自分の意志では動かすことのできない自律神経があります。
また、この自律神経はさらに2つにわけられています。
それが『交感神経』と『副交感神経』です。
交感神経は興奮した状態で働く神経で、闘争・逃走反応の神経とも呼ばれています。この交感神経が働けば、瞳孔は開き(瞳孔散大)、心臓の鼓動は早まり、血圧も上昇します。
まさに敵と戦う時や、全力で敵から逃げようとするときに働く神経と言えますよね。
そして、この交感神経を働かせる物質こそが、アドレナリンとノルアドレナリンというわけです。
ちなみにノルアドレナリンはアドレナリンと共に働きますが、アドレナリンと異なり、脳内でも働く物質です。
一方で副交感神経は、この交感神経とは逆の働きをしています。
ご飯を食べる時には落ち着きますよね?これは副交感神経が働いているからであり、腸管運動を促進してくれるなど、胃酸や唾液の分泌、心機能を抑制しています。
私たちは何気なく生活していますが、この真逆の特性をもつ交感神経と副交感神経が両立することで成り立ってるのです。
もし、このバランスが崩れてしまい、交感神経が過剰に働くとイライラして暴力的になってしましますし、逆に副交感神経が働きすぎると、鬱になり何もやる気がでなくなってしまうのです。
どちらもバランスよく働いてくれることが大切です。
3.アドレナリンが体で分泌されると
運動したり、敵に襲われたりなどなど、プレッシャーに襲われた時には、アドレナリンが分泌されます。
その結果、前章でもお話したように、交感神経が働くことになるのです。
すると、体ではどのようなことが起こるのでしょうか?
アドレナリンが分泌されると、交感神経が全身の器官に働きかけ、様々なことを引き起こします。
まずは、心臓の鼓動は高鳴り、骨格筋などの筋肉の血管は拡張します。また、呼吸効率が上がり、しっかり見えるように瞳孔が開くのです(瞳孔散大)。
いかにも運動している時の体の状態だと言えますよね。ただ、もちろんこのようなプラスの働きだけということはありません。
副交感神経とは逆に、皮膚や粘膜の血管は収縮し、消化管の機能は低下、さらには、感覚は麻痺してしまうのです。
このように、ずっとアドレナリンが分泌されっぱなしも困るというわけですね。
古いことわざで、『火事場の馬鹿力』という言葉があります。
これはつまり、追い込まれた時にアドレナリンが分泌され、交感神経を働かせることで、いつも以上に力が出せたりするということです。
アドレナリンが分泌されたことによる交感神経の働きを考えれば、命の危険を感じた時に、いつも以上に力を出せるのも納得ですよね。
また、感覚が麻痺してしまうので、怪我してしまっても痛みはアドレナリンが分泌されている運動時にではなく、運動後に襲ってくるのです。
4.アドレナリンは薬にも使われている
アドレナリンが働くことで、体には様々な効果があることは上で説明させていただきました。
このことを利用し、アドレナリンは医薬品としても使用されています。
心臓に働きかけてくれるので、心臓が止まってしまった時に使われたり、粘膜の血管を収縮させてくれるので、アレルギー反応を抑制するためにも使われているのです。
このようにアドレナリンは体で分泌される以外にも、薬としての使い道もあるのです。
5.さいごに
アドレナリンの結晶化を最初に成功させたのは、高峰譲吉とその助手の上中啓三と言われています。
しかし、同時期にアメリカのエイベルも同じくアドレナリンを、エピネフリンという名前で発表していました。
最終的には高峰が発表したアドレナリンの方が最初であることが認められ、現在でもアドレナリンと呼ばれるようになっているのです。
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