もう時期的にはカブトムシを捕まえる時期は過ぎてしまいましたが、今回はカブトムシの話題です。
カブトムシと言えば、子供の人気者で誰しもが一度は飼育した経験があるのではないでしょうか?
私も小学生の頃はカブトムシにはまりまして、アトラスオオカブトをねだって買ってもらったんですよ。
そしたらキャンペーンだということでくじを引きまして、2等賞を引き当てたんですね。
なんとその二等賞もクワガタで、すごくテンションが上がった一方でそんなに飼えないよとなったことを良く覚えています。
小学生にとって飼育というのは難しいもので、ヒーターを付けていたんですが、冬は超すことが出来なかったですね、、、
ごめんなさい。
あとは夜がたがたうるせーなと思ってゲージを見たんですよ。
すると雄のお尻の部分からなんかL字の硬そうなものが出てきていて、雌に突き刺していました。
小学生で純粋な僕はやばい!攻撃されている!と思って離そうと何回もしまして、今思えばそういうことだったんですね。
カブトムシも生き物ですから。
つがいで飼うとそのようなことが起こるんですね。
とまぁ今回は長々と語りすぎちゃいましたが、本題に入っていきましょう。
基礎生物学研究所が『カブトムシの角に関わる11個の遺伝子』を特定したと発表しました。
これまで角がどのように形成されるのかというのは謎が多かったんですが、今回の研究で角の進化過程が明らかになっていくのではないかと考えられています。
カブトムシの角
上図のように日本のカブトムシは頭部から前方に伸びる大きな角と、胸部の背中側に突き出た小さな角の2つの角を持っています。
これは雄同士が争う時に使用する武器として発達してきたと考えられており、前胸部と中胸部に角が刺さると真っ二つになってしまうくらい強い威力があるのです。
そんな角なんですが、さなぎになる前の幼虫の段階でどのような形になるかが決まります。
ということで今回の研究では、幼虫が持つ角の元となる器官の遺伝子を次世代シーケンサーで解析したそうです。
その結果、雄と雌で頭部と胸部の働きが異なる遺伝子1068種を特定し、さらにその中から角形成に重要な役割を果たすと考えられる49種類の遺伝子を選びだしました。
そして、その49種類の遺伝子を調べていったわけですが、その前にさらっと登場した『次世代シーケンサー』とはご存知でしょうか?
次世代シーケンサー
次世代シーケンサーーとはNext Generation Sequencer。
2000年ごろにアメリカで登場した装置で、この装置を使えば遺伝子の塩基配列を高速で読みだすことができます。
従来のシーケンサーと比べて読みだせるDNA断片が桁違いに多いので、短時間かつ低コストで遺伝情報を解析することができるんです。
当時、ヒトゲノムの解析には13年間の歳月と30億ドルがかけられました。
しかし、2016年にはそれを数日、1000ドルで解析することができるようになったのです。
さらに現在では数時間、100ドルで解析でいるように研究されているのだから驚きですよね。
低コストで解析できるようになった結果、医療だけではなく今回の研究のような進化の手掛かりを探すための研究にも用いられています。
11種類の遺伝子
選び出した49種類の遺伝子の働きをそれぞれ抑える薬剤を用いて、幼虫の角がどう変化するかを調べました。
その結果、38種類の遺伝子は働きを抑えても正常な角を持つ個体に成長。
しかし、残りの11種類では角が短くなったり、先端の枝分かれの形に変化が見られたり、胸部の角が消失、巨大化、新たな角が生えてきたりと明らかに角に変化が見られたのです。
このことから今回特定した49種類の遺伝子の内の11種類の遺伝子が角の形成に関与していることが明らかとなりました。
この11種類の遺伝子の大半は頭部や脚の形成に重要な機能を担っており、実は多くの昆虫が共通して持っている遺伝子なのです。
通常では角を作らない遺伝子が角に関わっている。
つまり、角形成は他との相互作用によって引き起こされていると考えられますが、なかなか興味深い話ですよね。
さいごに
コガネムシ科は基本角を持ちませんが、エンマコガネ(糞虫)は角を持ちます。
このエンマコガネの角にも今回の研究結果同様、頭部や脚の形成に重要な役割を果たす遺伝子グループが関与しており、今回の結果は非常に興味深い結果というわけなのです。
なぜなら、このエンマコガネとカブトムシは約1億5000万年前に共通の祖先から分岐して進化していったと考えられており、それは人間とコアラなどの有袋類の分岐と同じレベル。
つまり、それぞれが独立して進化していったにも関わらず、同じ遺伝子グループが関与していると。
なかなかおもしろいですよね!
これから昆虫たちが持つ角がどのように獲得され、多様化していったのか解明されるかもしれません。
ということで今回の科学ニュースは以上です。
来年はカブトムシ捕まえにいこうかな。