2020年1月17日、韓国の釜山で開かれた国際地質科学連盟の理事会にて、千葉県市原市の千葉セクションなどの5つの地質群が77万年前の前期更新世と中期更新世の境界を示す模式地として認められました。
それにより、「チバニアン」が中期更新世の地質時代名に採用されたのです。
1.千葉複合セクション
千葉セクションを中心とした5つのセクションは房総半島の中部に位置しており、養老川の周辺に位置しています。
それぞれ、小草畑セクション、養老田淵セクション、柳川セクション、浦白セクション、そして千葉セクションの5つです。
77万年前、この地の大半は海の底にありました。日本列島の多くは今と変わらない状態だったと考えられますが、関東地方の大半はまだ海だったのです。
そして、房総半島の中部は水深500~1000 mの深海で、河川からの細かい泥が積る場所でした。
その後、フィリピン海プレートに押され、急速に海底が隆起することで、房総半島の丘陵部を形成しました。現在もこの隆起は続いています。
約200万年間による速度が速い堆積により、その厚みは3000 mを超えており、時間分解能が高く、中部から北上していくと新しい時代の地層の露頭が連続して顕れることからも、千葉複合セクションは地質研究に適した場所なのです。
2.GSSP
地質時代の時期と名称はそれぞれの時代の始まりの痕跡を観察するのに最も優れた露頭を指定し、その露頭がある場所にちなんだ地質時代名が付けられてきました。
そして、この露頭の中で時代の境目を1点決定します。その点こそがGSSP(Global Boundary Stratotype Section and Point)です。
ここには黄金の杭が打ち込まれ、このGSSPに指定されるにはアクセスを含め様々な条件をクリアする必要があります。
そしして今回、千葉セクションがこのGSSPに指定され、現在では世界中に74か所のGSSPが存在しているのです。
例えばオランダのマーストリヒトにあるマーストリヒチアンのGSSP、ここは7200万年前~6600万年前の白亜紀末期の地層で、恐竜が反映した最後の時代であり、ここからはたくさんこの時代の化石が見つかっています。
地殻変動が少ないということ、そして、地質学が発展してきたのはヨーロッパであることから、GSSPの多くはヨーロッパにあります。
3.地磁気の逆転
千葉複合セクションでは77万年前の痕跡である松山-ブルン地磁気逆転境界と古期御嶽山の大噴火による火山灰層が1つの露頭で確認することができます。
これは千葉セクションがGSSPに選ばれた理由の1つです。
地磁気逆転は地球の磁場の向きが逆になる現象であり、77万年前の逆転から現在までで起こっていません。
逆転が起きる時に地球の磁場は弱まるため、宇宙からは宇宙船が地上へと到達しやすくなります。
その結果、Beの同位体である¹⁰Beの量が増えるため、堆積物を調べれば地球の磁場の逆転がいつ起こったのかを確かめることができます。
77万4000年前から始まったとされる地球の磁場の逆転は約2000年かけて北極と南極の地磁気極が入れ替わった研究の結果わかりました。
今の時点では地球の磁場の逆転はメカニズムが分かっておらず、地層を調査することはそのメカニズムの解明の一端となると期待されているのです。
4.さいごに
今後教科書にもどんどん登場してくるであろうチバニアン。ぜひ、その名前を覚えておいてくださいね。
地磁気の逆転以外にも海洋気候が数千年単位で変動していたとされる痕跡なども見つかっており、温暖化の気象予測などにもつながると期待されているため、これらの研究も楽しみです。
あぁ、個人的には化石掘りに行きたいな~。