12月8日、オーストラリアで回収されたはやぶさ2のカプセルがJAXA相模原キャンパスへと運びこまれました。その後、12月15日にカプセルの中身が確認されたところ、当初予想されていた量をはるかに上回る試料が確認されたのです。
その量なんと5.4 g。写真でみると大きな黒い石ころがたくさんあります。初代のはやぶさが2010年に小惑星イトカワから持ち帰ったサンプルの総量が10 μgであることからもそのすごさがわかると思います。
2020年は新型コロナウィルスの感染拡大によってあまり良いニュースが目立ちませんでしたが、はやぶさ2のカプセルが帰還したというニュースはとても勇気をもらえるニュースなのではないでしょうか。
今回はそんな『はやぶさ2』のことをご紹介していきます。はやぶさ2のことを知ってこれからの研究をわくわくしながら一緒に待ちましょう!
1.はやぶさ2とは
「はやぶさ2」は小惑星イトカワより探査を終えて帰還した小惑星探査機「はやぶさ」の後継機であり、太陽系の起源などを探るべく、C型小惑星リュウグウへと探査に向かった小惑星探査機です。
C型小惑星とは水や有機物が多く含まれると考えられる小惑星で、Cは炭素(Carbon)からきています。
そして、「はやぶさ」の経験を活かし探査を行った「はやぶさ2」は、6年間で52億キロもの旅を経て、2020年の12月、地球へリュウグウのサンプルが詰まったカプセルだけを地球に帰還させたのです。
2.小惑星リュウグウの探査
「はやぶさ2」は2014年12月3日に種子島宇宙センターより打ち上げられ、約4年の歳月を経て2018年6月27日に小惑星リュウグウの上空20 km地点に到着しました。
事前に地球からの観測によってリュウグウは当初ジャガイモのような形であると考えられていたのですが、着いてみるとびっくり!実はそろばんの球のような形をしていたのです。
また、小惑星イトカワでの経験より、リュウグウにも着陸に適した広い平たんな場所が存在するだろうと考えられていました。しかし、表面全体が岩塊に覆われた凸凹の表面であり、そのどこかに着陸しなければいけませんでした。
それでもはやぶさ2は小惑星探査ロボット「ミネルバⅡ」の着陸に成功させ、更にはリュウグウへの1回目のタッチダウンによってサンプルを回収することに成功したのです。
まだまだはやぶさ2のリュウグウでの探査は終わっていません。その後、銅製のプロジェクトタイルを秒速 2キロメートルの速さでリュウグウへと打ち込み、直径14.5 mにもなる大きな人工クレーターの作成に成功しました。
そこに再びタッチダウンをすることで、大量のサンプルの回収に成功したのです。
なぜ人工クレーターを作る必要があったのか?小惑星の表面は宇宙線によって風化しています。そのため、宇宙線の影響が少ないと考えられる地下の物質を回収したかったのです。
そして、はやぶさ2は2019年11月にリュウグウを後にし、地球へと向かいました。
3.超超超長距離ダーツ
1のはやぶさ2とはのところでカプセルだけを帰還させたというところで気づいた方も多いかもしれませんが、はやぶさ2は地球には戻ってきていません。今はなんと新しいミッションに挑んでいるのです。
はやぶさ2は地球から約22万キロメートル地点まで戻ってきて、そこから地球に向けてカプセルを放ちました。カプセルには軌道修正する能力は無く、この地点でどの角度、タイミングでカプセルを放つかが地球にきちんと送り届けることができるかのカギを握っていたのです。
22万キロの地点から地球に向けて放つってすごくないですか?めちゃくちゃながいきょりのダーツみたいですね。
そもそももっと近くで放てばいいじゃんかと思う方も多いかもしれません。地球から22万キロの地点からカプセルを放った理由はやぶさ2が新たなミッションのために旅立たねばならなかったから。
計算された結果、地球の大気圏へと突入を避けられ、さらには正確に地球へとカプセルを放つことができるギリギリの距離が22万キロという途方もない距離だったというわけです。
カプセルは無事に地球の大気圏へと突入し、はやぶさの時と同様、オーストラリアの砂漠へと着陸しました。
そして、はやぶさ2は2031年小惑星1998KY₂₆に到着することを目指し、新たな旅へと向かったのです。
4.カプセルの帰還
初代のはやぶさはカプセルの分離がうまくいかず、カプセルと共に大気圏に突入。燃え尽きてしまいました。しかし、はやぶさ2は無事に地球へとカプセルを放ち、そのカプセルは大気圏に突入しました。
そのカプセルが長い尾を引く流星となって撮影された写真はとても素敵です。写真はJAXA HPよりみることができます⇩
http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20201206_fireball/
そして、無事にパラシュートが開き、オーストラリアのウーメラ砂漠へと降り立ったのです。
カプセルはその2日後に日本へと到着し、JAXA相模原キャンパスへと戻ってきました。
5.さいごに
このようなドラマがたくさんあってはやぶさ2は地球へとカプセルを送り届けてくれたのです。本当にすごいですよね。
今後、どのようなことが明らかになってくるのか本当にわくわくしませんか?
小惑星リュウグウには水がたくさん含まれていると予想されていたのですが、どうやらその含有量は少なかったそうです。なぜ、水が少ないのか?そのあたりも謎に満ちており、今後の展望が気になるばかりです。
地球がどのようにしてできたのか?という疑問は完全に解決することはできないかもしれません。しかし、このような太陽系を形成したとされる小惑星の残りを調べることで、その謎に一歩ずつ近づくことはできます。
これからの研究発表を楽しみに待ちましょう!
はやぶさ2の現在地がリアルタイムで見れます⇩
『JAXA はやぶさ2プロジェクト』
<参考>
日経サイエンス 2021 2月号
Newton 2021 1月号
JAXA はやぶさ2プロジェクト HP