2019年11月、日本物理学会などのヘリウムを研究で使用する学会らが国をあげてヘリウムの安定供給に取り組むよう緊急声明を発表しました。
ヘリウムは半導体や光ファイバーなどの工業製品の製造や研究開発、またMRIなどの医療機器など多くの場所で利用されています。
そんなヘリウムは10年前よりも輸入価格が3倍に上昇し、研究開発用のヘリウムが不足している状況です。
このままでは半導体や光ファイバーなどの研究開発に大きな影響がでることや、さらにヘリウム不足が深刻化すれば一部の医療機器の使用が困難になってしまう可能性が考えられます。
今回はなぜこのようなことが起きているのか?また日本ではなぜヘリウムは生産されていないのか?解説していこうと思います。
ヘリウム
ヘリウムは無味、無臭、無色で水素に次ぐ軽い気体であり、貴ガスの一種です。
その軽さから気球や小型飛行船に使われたり、身近なところではパーティ用の声を変える道具としても使われていますよね。
そして、ヘリウムの沸点は元素中でもっとも低く、常圧化条件で摂氏̠̠̠-269℃であるため、超電導や極めて低い温度の環境を作るのにも利用されています。
そんなヘリウムは大気中にはわずか5 ppm(0.005%)しか含まれておらず、空気から単利することは難しく、天然ガスより分離、精製されるのです。
また、ヘリウムは太陽を構成する元素であると考えられたため、名前の由来はギリシャ神話の太陽神である「ヘリオス」からきています。
ヘリウムがなぜ不足しているのか?
先ほども言った通り、ヘリウムは空気中に微量しか含まれておらず、空気中から単離することは極めて困難です。
そのためヘリウムが多く含まれている天然ガスから単離する必要があります。。
そして、このヘリウムが多く含まれる(0.5%~1%)天然ガスの井戸は地球上の一部の地域に偏在しており、一部の地域でしか生産できないのです。
残念ながら日本にはヘリウムを多く含む天然ガスの井戸は無く、ヘリウムを生産することはできません。
現在ヘリウムの生産量第1位はアメリカであり、その生産量は世界の60%を占めており、カタール、アルジェリア、ポーランドやロシアなどが続いています。
日本は自国で生産ができないため、完全にこれらの国からの輸入に頼り切っている状況であり、アメリカの状況が変化しつつあるためヘリウムの供給が不足しているのです。
アメリカ政府の管理下にあった世界最大のヘリウム貯蔵施設がまもなく民営化されるということ。
また、アメリカがこれまでの天然ガスではなく、シュールガスの生産にに力を入れだしたことによる生産量の低下が大きな原因として挙げられます。
シュールガスとは頁岩と呼ばれる堆積岩の層から採取される天然ガスで化石燃料の一種です。
そして、さらには中国などが研究によるヘリウムの需要が大きくなり、需要が増えたにも関わらず生産が減っているので、ヘリウムが不足しているのです。
さいごに
ヘリウムは研究だけでなく医療現場にも欠かせない存在です。
そのため不足が深刻になれば大変な問題となると考えられます。
これから再利用するための技術を確立したり、国内に大きな貯蔵施設を作る必要があるということです。
ただ、生産量世界2位のカタールやロシアがアメリカに代わり大きくヘリウムの生産に力を入れるという動きもあり、不足はいずれ解消されるとも言われています。
今後ヘリウムがどうなるか気になるところですね。
パーティーなどでヘリウムを使う機会があれば、ふとこのような問題のことも考えてみてはいかがでしょうか?