リチウムイオン電池とは?ノーベル化学賞受賞

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私たちの周りには携帯やゲーム機、デジカメ、ビデオカメラなどの様々な電子機器が溢れており、欠かせない存在となっています。

便利な世の中になりましたね。

しかし、少し昔にさかのぼると電池を入れ替えたり大型のものであったりと今とは全く違いました。

私が子供のころはゲームボーイやゲームボーイアドバンスなどすべて使い切りタイプの電池だったのを良く覚えています。

では、この短期間で何があったのか?

その1つに今回の話題となる『リチウムイオン電池』があります。

リチウムイオン電池は充電できる2次電池であり、現在、携帯やゲーム機などの身近なところに多く使われている電池です。

では、なぜこのリチウムイオン電池によって大きく変わったのか?

また、リチウムイオン電池とは?開発者である吉野彰氏とは?それぞれご紹介していこうと思います。

1.リチウムイオン電池とは?

リチウムイオン電池とは一言でいうと、充電ができる2次電池の1つであり、負極にカーボン、正極にコバルト酸リチウム(LiCoO₂)、非水系有機電解液を使用している電池。

負極に使われているカーボンとは炭素のことで、コバルト酸リチウムは金属酸化物の一種です。

また、電池にはイオンが含まれている電解液が必要となるんですが、リチウムイオン電池はこの電解液が水を使ったものではなく有機溶媒にイオンを溶かしたものである非水系有機電解液となります。

そんなリチウムイオン電池の特徴としては、エネルギー密度がとても大きい!つまり、小型で軽いということ。

さらに水系電解液電池と比べて、起電力が4.2と非常に高いことが挙げられます。

なぜこんなにも高い起電力を生み出すことができるのか?それは水系電解液を使用すると、1.2~1.5 Vで水の電気分解圧を超えてしまいますが、非水系有機電解液を使用することで高い電圧を実現したのです。

リチウムイオン電池が生まれるまではこの問題が大きく、小型化もできなかったのでなかなか充電式の電池が普及しませんでした。

しかし、リチウムイオン電池が生まれたことで携帯やパソコンが大きく普及したわけなんですね。

そして、このリチウムイオン電池の開発に大きく貢献したのが吉野彰氏、ジョン・B・グッドイナフ氏、M・スタンリー・ウィティンガム氏の3名。

ウィティンガム氏は1976年に世界で初めてリチウムイオン電池の原型を作り、グッドイナフ氏はその電圧を2倍に向上させる正極を提案。

そして、吉野氏が安全性を向上させることで、実用化を現実のものとしたのです。

もちろんこの3名の方々以外にもたくさんの研究者の方々の努力があって生まれたリチウムイオン電池ですが、2019年ノーベル化学賞ではこちらの3名の方々が受賞しました。

2.吉野彰氏

1948年に大阪に生まれた吉野彰氏。

小学4年生の時、担任の先生が勧めてくれた1冊の本が科学に目覚めるきっかけとなりました。

その本とは『ロウソクの科学』

当ブログでも紹介しましたが、150年ほど前、マイケル・ファラデーが大衆に向け、クリスマスに科学の講演を行った内容をまとめた本。

今も色あせないその講演は誰しもが読んだ方が良いと思います。読んでいない方はぜひ!この記事の最後に私の紹介記事も載せておきます。

その後、京都大学工学部石油化学科へと入学し、同大学の工学研究科を卒業したのちに旭化成に入社しました。

そして、1985年に新たな二次電池であるリチウムイオン電池の基礎概念を確立したのです。

ノーベル賞受賞後の会見では研究の本質をマラソンに例え

研究開発はマラソンのように必ずゴールがある。明確なゴールを自分で確信すること。苦しい時はあるんですけど、それをのりこえれば楽しい、らくになれる。

研究はこんなに楽しいものなのかと、というように語っておられました。

素敵なお言葉ですね。

3.リチウムイオン電池ができるまで

リチウムイオン電池が開発されるまで、充電式ができる二次電池は鉛蓄電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池などがありました。

これらはどれも水系電解液電池であり、非常に大きく重いというのが特徴ですが、時代はポータブル化となり、より軽く、起電力の高い電池が求められていたのです。

そのためにも古くから非水系電解液電池の研究が行われていたのですが、なかなか商品化できていませんでした。

金属リチウムを使用したリチウムイオン電池の原型となる二次電池はすでに作られていましたが、電池に衝撃が与えられると激しく燃えるなどのことが起き、安全性が確保できなかったのです。

吉野氏はそんな中、必ず非水系電解液電池の二次電池が必要である、必ずできると確信し、研究を進めました。

注目していたのは白川英樹氏(2000年ノーベル化学賞)が1977年に発見した電気を通すプラスチックであるn型ポリアセチレン。

無水状態で極めて安定であり、負極に使用すれば危険な金属リチウムを使用しなくて済むからです。

しかし、その当時、正極に適した素材が見つからないでいました。

転機を迎えたのは1982年の年末。午前中に大掃除をすまし、たまたま取り寄せたまま目を通す時間のなかった資料を読んでいた時です。

今回ノーベル化学賞を同時に受賞されたオックスフォード大学(当時)のグッドイナフ教授が発表した論文にコバルト酸リチウム(LiCoO₂)が二次電池の正極となることが示されていました。

さらにそこには組み合わせる負極がないと!

吉野氏はポリアセチレンとコバルト酸リチウム(LiCoO₂)を組み合わせ、二次電池を作ったのです。

ただここで問題が、、、ポリアセチレンは熱安定性に欠けるため、高温での性能劣化を解消できませんでした。

また、比重が1.2と小さく、とてもかさばってしまうので、軽量化はできても小型化ができない。他に良い素材がないか探すことにしたのです。

そしてそこで閃いたのがカーボンでした。

気相成長法炭素繊維(Vapor phase Grown Carbon Fiber)通称VGCFというカーボン素材を手に入れ、1985年、カーボン/LiCoO₂ リチウムイオン電池が誕生したのです。

軽量化と小型化の両方のニーズを両立させた二次電池。

リチウムイオン電池の基本構造を請求範囲とする特許をはじめ、様々な重要特許が生まれました。

その後、1991年にソニー・エナジー・テックよりリチウムイオン電池が世界で初めて商品化され、それに次ぐ形で吉野氏が所属していたエイ・ティーバッテリーが1993年に商品化したのです。

リチウムイオン電池は私たちの身の回りにある携帯、ノートパソコン、デジカメ、さらには電気自動車や人工衛星、ロケットなど様々なところに利用され、2010年にはLIB市場は1兆円規模に成長しました。

私たちの生活を変えた発明であると言っても過言ではありませんね。

4.さいごに

10年後の未来はどうなっているのか?

これまでの10年を見て、しっかりと考えていく必要があります。

信じられないようなスピードで発展しているように思える世の中もこれまでを見直すことで見えてくるものがあるのかもしれません。

また、吉野氏が研究を語っておられましたが、マラソンで例えれるというのは研究でけではなく、色んなことにも言えることであると思います。

ゴール、将来のビジョンをしっかりと持ち、苦しいときに諦めず、しっかりと前に進むことが大切ですね。

また、科学は積み重ねです。

突然、何もないところから新しいことは生まれません。

これまでの研究があるからこそ、今の研究があるのです。

いろいろな分野の研究に目をやってみてはいかがでしょうか?

【参考資料】

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