1.ミョウバンの結晶をつくる前に
私は大学と大学院でタンパク質の結晶化を行っていました。
毎日、実験をしていましたが、残念ながら最終的に自分の力では綺麗な結晶化を実現することができなかったのです。
しかし、とても運は良く、卒業した先輩が仕掛けていた溶液で、奇跡的に綺麗な結晶ができていたのです!
何とも複雑な気分ではありますが、そのおかげで、研究結果には困りませんでした。
仕掛けた先輩も在学中には綺麗な結晶ができず、卒業されていったので、もちろん結果はすぐに報告させていただきました!
なぜ、こんなにも結晶ができにくいのか?
タンパク質は非常に結晶性が悪いため、結晶化が困難なので綺麗な結晶ができないということはよくある話なのです。
また、タンパク質の種類によって全く条件も異なるため、すべてが手探りなのです。
運が良くなければ、何年もかかってしまうということもありえます。
では、そもそもそんな時間をかけてまでタンパク質をなんで結晶化する必要があるの?
恐らくそう思われる方が多いと思います。
実は私たちが必死にタンパク質を結晶化させようとしていたのは、その構造を見るためなのです。
タンパク質はアミノ酸がたくさん連なってでできたものです。
つまり、タンパク質の構造を見るということは、そのタンパク質がどんなアミノ酸からどのように作られているのかを、確かめるということなのです。
また、どのようなアミノ酸でできているかを見ることができれば、そのタンパク質がどのような働きをするのかが分かるというわけです。
では、タンパク質の結晶を作ったとしましょう。
一体どうやってそこから構造を見るんだ!?
それは『X線結晶構造解析』という技術を使います。
タンパク質の結晶にX線を照射し、その反復構造によって回析したX線像が作り出すたくさんの回析点を測定するのです。
少し難しいので、簡単に言うと、結晶にX線を当てると、それぞれ違ったパターンの回析が得られるので、そのパターンを読み取ることで構造を解析するわけです。
これでもまだ難しいので、もっとわかりやすく言いましょう。
例えば水には波が伝わりますよね。
この波が物に当たるとどうなりますか?
波は色んな方向に形をかえますよね。
X線がタンパク質の結晶に当たる時にも同じことが起こります。
つまり、X線が当たってどうなったかを見れば、その構造がわかるというわけですね!
このようなX線結晶構造解析は様々な分野で利用されています。
ひとまずこの辺にして、今回の本題へと入っていきましょう!
今回、結晶化するミョウバンはタンパク質ではありません。
しかし、非常に結晶性が良く身近な存在であり、誰でも簡単に結晶を作ることができます。
ぜひ一緒にやってみてください!
そして、このシリーズを通して、私がやってきた研究を少しずつでも紹介できたらと思います。
2.今回準備したもの!
ミョウバンの結晶化は教科書にも書かれていますが、実際にやったことはありませんでした。
なので、ミョウバンの結晶化は初体験です。
簡単な結晶化よりも難しいことやってたんだし、いけるだろうという安易な考えです。
今回、結晶化するにあたり、以下の物を準備いたしました。
もちろん主役となるミョウバンです。
スーパーですぐに手に入れることができますし、ネットでも購入できます。
スーパーでは、このサイズで84円で購入することができました。
安い!
一般的にミョウバンと言えば硫酸カリウムアルミニウムです。
今回使用するアンモニウムミョウバンは、カリウムがアンモニウムに変わっただけです。
こいつでも結晶化はできるでしょう!
一応今後のことを考えて、硫酸カリウムアルミニュウムもネット注文しました。
いずれ登場してくると思います。
では、次に行きます!
ここからはなんとすべて100円ショップダイソーさんで購入しました。
お金をかけずとも実験ができてしまいます。
さすがダイソーさんですよね。
今回結晶を作成するフィールド(舞台)となるガラス瓶です。
こいつにミョウバンを溶かした溶液を入れ、結晶化を進めていこうと思います。
次に、結晶を形成させるための糸です。
銅線が好ましいそうですが、無かったのでステンレスの針金を買いました。
錆びにくいし、きっとうまくいくはずです。
こいつはアルミシートです。
一体何に使うのかと言いますと、保温するためです。
結晶化は温度が下がっていくことで、解けきれなくなったミョウバンが析出してくることで起こります。
急激に温度が下がってしまえば、急激にミョウバンが析出し、汚い結晶になってしまうのです。
なので、この寒い冬でも温度が逃げにくいようにガラス瓶に、コーティングを施そうと思います。
これがコーティングした瓶です!
いかにも保温性が高そうです。
最後にこいつはクーラーボックス!
こいつもアルミシートと同じ理由です。
室温はエアコンがかかっていても20度しかないため、急激に温度が下がる可能性があります。
そこで、この中で保存することで温度をゆっくり下げていきます。
こいつだけはダイソーでも100円でかえない300円の商品でした。
この他にも家にあった割りばしとサランラップにコーヒーフィルターを使います。
なんだがわくわくしてきました。
3.種結晶づくり
綺麗で大きな結晶を作るためには種結晶を用意しなければいけません。
そこで、まずは種結晶を作ることにします。
実際にタンパク質の結晶化でも種結晶を入れることで、綺麗な結晶ができる時があります。
絶対ではないところがまた難しい所です。
では、まずは水道水にミョウバンを溶かしていきます!
ちょっと待ってください!
そのままの水道水には溶かすことはできません!!
なぜなら水道水には塩素やトリハロメタンなどが含まれているからです。
一度沸騰させることで、こいつらを除去しましょう。
最近では高額なサーバーを売りつけるために、このトリハロメタンの危険性をうたう業者が増えていますが、日本の水質基準でそこまで気にする必要はないと考えられます。
なんにせよ私の目標は綺麗なミョウバンの結晶を得ることです。
水道水に深まれる不純物をより減らすために、20分は沸騰させることにします。
⇧このように20分間沸騰させました!
これで水は完成ですね!
いきなり熱湯を瓶に入れてしまうと割れる危険があるため、200ml計って少し冷ますことにします。
ほこりが入らないように、ラップをかけた時の温度は70℃くらいです。
室温が9℃しかないため、すぐに冷めてしまうんですね。
しばらく時間が経ちました!
こんなもんでいいでしょう。
温度が下がってきたので水を200ml瓶にいれます。
ここからついに、ミョウバンを溶かしていきます。
今回ミョウバンは200mlに対し、購入したミョウバン30g全部入れちゃいましょう!
お皿に出してみると、たった200mlにこんなにも溶けるのかよ!
って思ってしまう量ですね。
でも心配しなくても全然大丈夫です。
本来、今回のような焼きミョウバンを使用するのであれば、60℃で理論上50 gは溶けるのですが、30 gしかないので余裕なんです。
30 gで問題はありません。
水が20℃になった時、ミョウバンの溶解度は200mlで12 g程度です。
つまり、20℃になった時には、18gの結晶ができると考えられます。
温度と水の量が上がれば、溶ける量も増えますが、逆に水の量と温度が下がれば溶ける量は減ってしまいます。
溶解度曲線や、飽和水溶液など懐かしいですよね。
それでは温度が下がらないように加熱しながらミョウバンを溶かしていきましょう。
頑張ってスプーンでかき混ぜながら溶かしていきます!
ぐるぐるまわします!
ひたすら回します!
10分経過。。。。。
ひたすら回しているのに、濁ったまま全然透明になりません。
つまり、完全に溶けないではないですか!
ちょっとずつ入れればよかったと少し後悔しましたが、たかが10分で音を上げるようなことはしません。
実験には時に辛抱強さが必要なのです!
このまま回し続けます。
20分経過。。。。。。。。。。
やっと終わりが見えてきました!
白い濁りも少しずつ取れてきました。
もうすぐ完全に溶けてくれそうです。
30分後。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
完全に溶けてくれました!
根気よく頑張ったかいがあります。
研究室では、撹拌機があったので、今回のように溶かそうと思えば、ただ待ってるだけでできました。
しかし、自分で30分もかき混ぜてみて初めて撹拌機のありがたさを今感じました。
ありがとう撹拌機!
ではこれをコーヒーフィルターで濾して、用意していた断熱の瓶に移し替えます。
種結晶では濾過まではしなくても良いかもしれませんが、より綺麗な結晶を作るための努力は惜しみません。
これをクーラーボックスへと保存し、種結晶ができるのを待ちたいと思います!
つづく