もし、針で刺されたら私たちは痛みを感じますよね。注射の針やマチ針、蜂などに刺されたらとても痛いはずです。
では、なぜ痛みを感じるのでしょうか。
それは、皮膚には沢山の痛みを感じる痛点が存在しているからです。
痛みを感じなければ傷をしていることに気づかず、失血死や腐敗に繋がってしまうため、痛みなんて無い方が良いと思うかもしれませんが実は痛みを感じるということは立派な防御反応。
つまり、傷をおうと痛いことにもちゃんと意味があるわけですね。
しかし、ここで今回の本題、『蚊に刺されても痛みは感じません』。
蚊に刺されて痛かったら、たまんない気もしますが、、、、
大体、蚊に刺されている時には気づかず、後になり、赤く腫れてかゆくなってから気づくことが多いと思います。
ほんとうに忌々しいやつらですよね(笑)
では何故、蚊に刺されても痛くないのでしょうか?
また、なぜかゆくなるのでしょうか?
今回はそんな謎を解き明かすために、まずは蚊について説明していきたいと思います。
1.完全変態
蚊は昆虫であり、哺乳類である人間とは違います。
また、そんな蚊は大人の姿と子供の姿が全く異なり、蛹という段階を経て、成虫へと姿を変えていくのです。
卵→幼虫→蛹→成虫
このように蛹の段階を経て、大きく姿を変えることを『完全変態』と言い、完全変態をする身近な生き物は蚊の他にハエ、チョウ、ハチなどがいます。
チョウの蛹なんかはみなさん小学生の時に見たことがあるのではないでしょうか?
私も良くアゲハチョウの幼虫を採ってきて、蛹まで育て、羽化させたものです。
そんな蛹の段階では、重要な組織を残し食細胞の働きによって体を構成していた器官が分解され、成虫の元となる『成虫原基』を中心に体が構築されていきます。
体を一旦分解して、再構築するってすごすぎますよね。
なぜ昆虫はこんなむちゃくちゃな方法をとるのか?有力な説として以下のようなことが考えられています。
昆虫はクチクラという硬いからに覆われているため、成長するのが大変なのです。
そこで、まずは柔らかい状態の幼虫として大きくなります。
その後、蛹となり、身体の大部分を一旦溶かして成虫になる道を選んだということ。
チョウを幼虫から育ててみると、本当に彼らのすごさがわかります。
羽化する時は本当に感動です。
なんでちょっと見た目が気持ち悪い、いや可愛らしい芋虫が、あんなに美しいちょうちょになるのだろうか?子供のころは本当に疑問でした。
本当に生き物は不思議です。
蚊の幼虫はボウフラで、蛹はオニボウフラと呼ばれ、水たまりなどで見ることができます。
では、このように完全変態によって劇的な変化を遂げる蚊は何故、私たち人間の血を吸う必要があるのでしょうか?
2.蚊が私たち人間の血を必要な理由
蚊にも雄と雌がいるわけですが、どちらも人間の血を餌にして生きているわけではありません。
雄は雌のように動物の血を吸うことはなく、樹液や花の蜜を吸って生きています。
なので、口も雌に比べると短くなっているのです。
また、雌も常に人の血を吸っているわけではなく、雄同様に樹液や花の蜜を吸って生きています。
では、なぜ雌は私たち人間の血を吸う必要あるのでしょうか?
それは、卵を育てるためにタンパク質が沢山必要になるからです。
血液は沢山のタンパク質を含んでいます。
しかし、普段蚊たちが主食とする樹液や花の蜜からはタンパク質を得ることはできません。
そのため、産卵期に蚊の雌たちは無理をしてでも血を吸わなければならないのです。
雌は卵を産むために私たち人間だけではなく、他の哺乳類、たとえば犬とかねことか、なんなら鳥類の血も吸います。
蚊も生き残るために、そして次の世代へと繋げるために命がけで私たちの血を吸いに来ているわけですね。
かといって喜んで刺されたくはないですけど(笑)
このように私たちを含む様々な動物たちから血液を奪う蚊ですが、私たちは蚊に刺されても痛みを感じません。
いったいなぜなんでしょうか?
3.蚊が持つすごい口
本来、針で刺されると、皮膚にたくさん存在する痛点により痛みを感じるはずです。
しかし、蚊に刺されても痛みを感じません。
蚊に刺されても全く気づかないときもありますもんね!
あとからかゆくなってきてやられたわ!みたいな感じになります。
なぜ痛くないのか?
それは蚊の持つ唾液に秘密が隠されています。
なんと、蚊の唾液には痛みを感じなくさせる麻酔成分が、含まれているのです!
刺すと同時にこの唾液を注入することで、痛みを感じさせないように神経を麻痺させています。
蚊に刺されても痛くないのは、麻酔をうっていたからなんですね!
実はすごいのはそれだけではありません!
蚊の口は6つのパーツで構成されています。
・血液を通すストロー状の上唇
・唾液を送る小咽頭
・皮膚を切り裂く2本の小顎
・支える役割2本
皮膚をのこぎりのように切り裂いて、ストローで血を吸い上げます。
あんな小さな口なのに、そこまで考えられた機能を持ち合わせていたんです!
さらに、唾液にはもうひとつ重要な成分が含まれています。
それは血が固まらなくなる成分です。
血には集まって固まり、傷を修復する血小板が含まれており、集まって固まる作用を『血小板凝固』と呼んでいます。
傷ができるとすぐに血が固まって出血をふさいでくれますよね?
まさにその作用です。
蚊の唾液はこの血小板凝固を防ぎ、ストローが詰まらないようにしているのです。
もし、血が固まって詰まってしまうと蚊は死んでしまいます。
基本的にこの素晴らしい作用を持つ注入された唾液は、血の吸い終わりとともに一緒に吸われて蚊に戻っていきます。
しかし、その時に全部を吸いきることはできません。
また、個体によっては吸うのがうまい個体や、苦手な個体がおり、麻酔成分を余分に残してしまう個体もいるのです。
そして、まさにこの吸い残った唾液がかゆみを引き起こしているのです!
例えば、血を吸っている途中に蚊を仕留めてしまうと余計にかゆくなるのはそのせいです。
ではなぜその麻酔を含む唾液が残るとかゆくなってしまうのでしょうか?
4.蚊に刺されるとかゆいのはなぜ?
蚊の唾液には、痛みを感じさせない麻薬成分と血が固まらなくなる成分、この二つの成分が含まれると言いました。
この素晴らしい作用を持つ唾液が、アレルギー反応を引き起こしてしまうのです。
だからかゆくなってしまうのです。
アレルギー反応とは、体を守ろうとする働きが過剰に働いてしまい、逆に体を傷つけてしまうことです。
花粉症もアレルギー反応ですよね。
このように蚊の唾液がアレルギー反応を引き起こすため、かゆくなってしまうのです。
花粉症の記事⇩
5.さいごに
意外かもしれんが、蚊は実は年間で人を殺している生物の1位です。
もちろん直接的に殺しているわけではないですよ!
蚊に血を吸われすぎて死亡するとか聞いたことないですよね(笑)
蚊が恐ろしいのは、ジガ熱やマラリア、日本脳炎、デング熱などの感染症を媒介してしまうからです。
実はあんなに小さくても恐ろしい生き物なのです。
人も虫もみかけによりませんね。
日本でも環境の変化によって将来的に感染症を媒介する蚊が生息するかもしれないと言われています。
環境にはもっと気を配っていかなければいけませんね。
アレルギーについてはまた今度、詳しく紹介したいと思います。