【科学選書 Vol.10】動物たちのすごいワザを物理で解く 感想・レビュー マティン・ドラーニ リズ・カローガー

スポンサードリンク

何だか久しぶりの科学選書になります。

今回ご紹介するのは『動物たちのすごいワザを物理で解く』という本です。

名前だけ聞けば少し難しい本なのかな?と思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません。

ただ、かなり分厚く、きちきちに文章が詰まっていますが、、、、本が苦手な方は違う本から読んだ方が良いかもしれませんね。

この本は私たちの周りにいる身近な生物の凄さと共に、物理の基礎も分かりやすく説明してくれています。

物理が好きな人はもちろん、物理が苦手でも生物が好きな方はぜひとも読んで欲しい本だと思います。

では、早速本の内容の紹介に入っていきましょう。

気になった方はぜひ購入してみて下さいね。

人類は誕生して以来、科学技術を発達させ、たくさんの物を発明してきました。

では、人間以外の生物たちはどうでしょう?

人間以外の生物たちは物理なんか勉強もできなければ理解もできないんだから、物理は関係ないでしょう!と思うかもしれません。

しかしそんなことはありません。

生物たちもまた様々な物理を利用し、その姿を変えてきたのです。

もちろん物理を利用し、といっても意図的ではありません。

この本の中では『ベッカムが乱流が球の自転をいかに変化させるかに関する洞察で、彼がノーベル賞を取ることはないだろう。』と例えられています。

要するにスーパー選手であるベッカムのように計算してやっているわけではなく、生物たちは感覚的に物理を使用しているです。

人間が今の物理を確立する遥か昔から、生物たちはその姿を今の環境に合うものへと変えてきました。

なので、人間が理解したと思っている以上に生物たちは物理を使いこなし、人間が思う以上のことをやってのけているのです。

この本はそんな生物たちのすごいワザを簡単にわかりやすく教えてくれます。

しかし、ほとんどのことはあくまで推測であり、確実にそうだと言い切ることはできません。

分からないことだらけなのです。

人間の理解している範囲以上のことを生物たちはしている上に、生物たちが見ている光景はきっと人間の見ている光景とは違うからです。

それでも多くの研究者たちは生物たちがなぜそのような行動をとるのか?なぜそのような形をしているのか?など様々なことを明らかにするために日々研究を進めています。

では、それが何の役に立つのか?と思う方がおられるでしょう。

もちろん生物を知ることは非常に役に立つのです。

例えば、ヤモリの足を知れば、それを模した壁を登れるスーツであったり、何回でも使えるテープを作れます。

さらに、くじゃくの羽を模した色が変わる塗装は、ニセ札を作りにくくします。

もっと言えば、生物を見て思いついた物理の法則は数多くあるのです。

だって人間以外の生物たちの方が物理を使いこなしているのだから。

このように生物を知ることは私たちの科学技術の発展にも繋がるということなのです。

そのためにも生物学だけではなく、化学も物理も必要であり、これらを分裂してしまってはいけませんよね。

残念ながら最近は特に分かれてしまっている気もしますが、、、

ぜひ、皆様もこの本を読んで生物たちの凄さ、神秘を体感してみませんか? 

物理も生物もさらに好きになると思います。

『生き物の世界では、生き残るのは勝者だけなのである。』

1.本を読んでみて。。。。。。。

今回、この本を読んでもっとも印象に残った2つのお話を簡単に紹介したいと思います。

まず1つ目はウミガメが持つ特殊な能力についてです。

例えば私たちは携帯のGPSを使用し、今どこにいるのか、目的の場所があとどれくらいの距離なのかを簡単に知ることができます。

本当に便利な世の中になりましたよね。

では、ウミガメはどうでしょう。

ウミガメはおよそ20年の歳月を経て世界一周しながら成長し、どんなに遠い所に行っても自分が産まれたビーチへと正確に戻ってくるのです。

すごくないですか?

私たち人間は携帯を使わず、何万キロも離れたところから正確に自分の生まれた町へと戻ることができるでしょうか?

正直、数キロ離れたところですら携帯が無ければ戻ることができないかもしれません。

ではなぜウミガメが正確に位置を把握することができるのか?

それは地球の”磁場”を感知しているからです。

ウミガメは地球の磁場を感知することで、正確に自分のいる緯度と経度、さらには進むべき方角を知ることができるそうです。

産まれたビーチの場所を覚えておくことで、どんなに遠くに居ても戻ってこられるわけなのですね。

もし近くにウミガメがいなくなってしまったビーチがあるとすれば、人間がビーチに電気を流し、建物を建てたせいかもしれません。

なぜならば、電気が流れると磁場が出てしまうからです。

地球の磁場を感知しているウミガメからすると大問題ですよね。

また、子亀には建物の明かりが水面に映る月明かりに見えてしまいます。

海とは反対方向に行ってしまい海にたどり着けなくなってしまうのです。

ウミガメを戻すには、ただ卵をビーチにうめるだけではなく、様々なことを考慮しなければならなさそうです。

ただ、どのようにしてウミガメが磁場を感知しているのかまでは未だに分かっていません。

体内に磁鉄鉱を持ち、その磁性を使って感知している可能性がありますが、人間の現代の装置では、ウミガメが持つ磁性は微小すぎて測定することができません。

今は無理かもしれませんが、今後明らかになるのが楽しみですね。

そしてもう1つはハナハチたちのお話です。

ハナバチたちはなんと、花の電場を捉え、蜜の蜜を獲得しているのです。

それを確かめるために研究者たちは人工的な花に電気を流し、電場を発生させたものとそうでないものを用意しました。

電気を流し電場を発生させたものには甘いショ糖の蜜を、そうでない物にはキニーネ(ハナバチには苦く感じる人工合成物質)の蜜を。

すると、ハナバチたちは80%の高確率でうまく甘いショ糖を含む蜜をみつけだしたのです。

その後、ランダムに人工花を入れ替えたとしても正解率は70%を越え、ハナバチたちが電場を感じているのは明らかでありました。

しかし、植物がどのようにして電場を発生させるのか、ハナバチたちがどのようにして電場を感知しているのかはまだよくわかっていないのです。

私たちが想像するような豆電球を光らせる電子回路のように単純なものではないということだけは明らかであり、もっと小さな電子の動きであることは間違いありません。

今後、生物たちが観ている世界にもっと近づく日がくると良いですね!

とりあえず紹介するのはここまでにします。

本の中ではこの2種類の生き物たちのお話もまだまだ詳しく書かれていますし、2/30種類の情報でしかありません。

他にもまだ28種類もの魅力的な生き物の研究について教えてくれるのです!

皆様も生き物たちのすごいワザを覗いてみませんか?

2.本の詳細

『動物たちのすごいワザを物理で解く』

マティン・ドラーニ
リズ・カローガー
吉田三知世 訳
株式会社 インターシフト 発行
合同出版 株式会社 発売

著者・訳者情報以下本より抜粋⇩

著者

マティン・ドラーニ
国際的な物理学誌『フィジックス・ワールド』の編集者。ケンブリッジ大学所属キャヴェンディッシュ研究所で高分子物理の博士号を取得後、現職に。

リズ・カローガー
サイエンスライター。オックスフォード大学で材料科学の学位、ブリストル大学でダイヤモンド薄膜の博士号を取得。BBCニュース、『ガーディアン』紙、『フィジックス・ワールド』誌などに寄稿。

訳者

吉田三知世(よしだみちよ)
翻訳家。京都大学理学部物理系卒業。訳書は、ランドール・マンロー『ホワット・イフ?』『ホワット・イズ・ディス?』、ニール・シュービン『あなたのなかの宇宙』、ピーター・フォーブズ『ヤモリの指』、ロバート・P・クリース『世界でもっとも美しい10の物理方程式』ほか、多数。

スポンサードリンク