脳を持つ地球上の生物は沢山います。
もちろん単細胞生物などは脳は持ちませんが、犬や猫、昆虫、魚、チンパンジーや人間を含むたくさんの生き物は脳を持っていますよね。
想像すればお分かりいただけると思いますが、より高度な生物は脳を持ち、脳の存在は重要となります。
そして、地球上にはたくさんの脳を持つ生物がいるわけですが、人間にしかできないことがあるのです。
いったいそれはなんでしょうか?
実は言語を使って様々なことを表現するということです。
例えば、人間に近い脳を持っているチンパンジーは単語を覚えることはできても、文法を使い、文章を作ることはできません。
犬や猫もかしこくても人間の様にしゃべることはできませんよね。
つまり、言葉を巧みに操ることは、人間にしかできないのです。
では、なぜ人間にしかできないのでしょうか?
まさにそれを可能にしているのが、大脳皮質の発達です。
より深く、しわを複雑に多くもつことで表面積を広げ、神経細胞がたくさん集まることができているのです。
その結果、人間の脳は様々な場所で情報をやり取りし、言語を含む様々な行動を可能にしてきたのです。
このように人間にとっても重要な脳ですが、現代の技術をもってしてもまだまだわからないことがたくさんあります。
ただ、他の動物よりも発達していると言われている人間の脳のすべて解明されてしまうのも少し怖い話ですよね。
神秘的な部分もあっても良いのかもしれません。
脳についてはまだまだわからないことも多いですが、今回ご紹介する本「脳と心のしくみ」では、脳のどの部分がどのような役割をしているのか?というところから始まり、脳にまつわる身近な疑問や、病気、最新の研究などを教えてくれます。
また、MRI、fMRI、PETなどの最新の機器で観測された脳の写真はとても魅力的です。
人間にとって最も重要である脳について、この本を読み、色々と考えてみませんか?
1.本を読んでみて。。。。。。。
この本を読み、私が一番衝撃をうけたことをご紹介いたします。
病院では欠かすことのできない麻酔薬についてなのですが、その作用はあまりわかっていないそうです。
例えば、花粉症の薬であったり、たいていの薬は、その化学構造式を見れば、どれをターゲットにしているのかがわかります。
つまり、花粉症の薬であれば、抗ヒスタミン剤だなというように共通点が多いので化学構造式をみればわかるということです。
しかし、麻酔薬は化学構造式に共通点が無く、どこに効いているのかいまいちわからないのです。
もちろん動物実験や、臨床実験を繰り返すことで、安全性を確かめてから使っていますよ。
このようにかなり不安になるような麻酔薬ですが、麻酔薬無しでは手術には耐えることはできませんよね。
また、麻酔薬を使用しても神経細胞は活動を続けるというおもしろい結果の実験があります。
1981年にノーベル医学賞を受賞したデイヴィット・ヒューベルとトルステン・ウィーセルの実験で、猫に麻酔をかけ、意識が無い状態であっても、神経細胞は反応を停止せず、一方で、神経細胞を支える細胞であるグリア細胞の反応が停止したのです。
つまり、麻酔は神経細胞に効いているわけではなかったということになります。
また、このような実験の結果から、意識がグリア細胞に大きく関わっているのではないか?という考えをしている研究者もいます。
では、人間や動物の意識とはどこにあるのでしょうか?
残念ながらその答えはわかりません。
神経細胞やそれを支えるグリア細胞の繋がりがある時に意識が現れるのかもしれませんね。
他にもこの本は様々な面白い実験や研究のお話を教えてくれます。
あと一つ紹介するのであれば、夢の研究ですかね。
夢をなぜ見るのか?
覚えていない時も多いですが、私たちはみんな夢をみています。
これは、寝ることで記憶などを整理するなどと言われていますよね。
では、なぜ記憶とは関係のない夢を見るのでしょうか?
それも不思議ですよね。
ある人に寝てもらい、脳波を測定します。
夢を見ている人を起こし、どんな夢を見たのかを訪ね、脳波と夢の関係を調べるといった研究もされているそうです。
車が夢に出てきた時の脳波はどんなんだったのか?
また、鳥が出てきた時は?友達が出てきた時は?などを調べていきます。
そして、今度は脳波からその答えを導き、どんな夢を見ていたかを当てることができたそうです。
あくまで今は単純な結果ではあるかもしれませんが、謎が多い夢も解明される時が来るかもしれませんね。
他にもこの本にはまだまだSFじみた話もあったりするので、読めば脳への思いが強まることは間違いないでしょう。
最後に著者である池谷先生が創発プロジェクトとして、将来の脳研究者へ向けたメッセージが書かれています。
私たちの脳にはまだまだ未知数で、無限大の可能性があります。
例えば、私たちは紫外線を見ることはできません。
しかし、昆虫は紫外線を見ることができるのです。
また、私たちが感じることができない超音波を使用し、コウモリは狩りや飛行を行っています。
もしかしたら私たちの体の器官では感じることのできない世界が紫外線や超音波以外にもまだまだ広がっているかもしれないのです。
そして、人間にもこの世界を感知することのできる器官を取り付ければ、脳が感知できるというのです。
つまり、脳にはまだまだ可能性が眠っており、私たちの身体の器官では、ほんの少しの世界しか見れていないのかもしれないのです。
他にも記憶を思い出させる薬だとか、先生が思い描いている世界はとてもすごいことがこの少しの文章でもわかるのではないでしょうか。
これからの更なる脳科学の発展が楽しみですね。
2.本の詳細
『脳と心のしくみ 【最新科学が解き明かす】』
池谷裕二 監修
富永靖弘 発行者
(有)TPS21 印刷所
新星出版社
2017年8月5日 発行