ナメクジに塩をかければ消えてしまいます。何故ナメクジは消えてしまうのでしょうか?
実はナメクジは消えてしまったわけではありません。ナメクジの水分が奪われ、縮んでしまっているのです。
これには濃いものを薄めようとする働きが関係しており、他にもこの働きは海水を飲んではいけないことにも大きく関係しています。
今回はナメクジはどうして縮んでしまうのか?また、どうして海水は飲んではいけないのか?
解説していきたいと思います。
1.拡散
例えば薄い濃度と濃い濃度の水溶液があるとします。
この2つの溶液を下の図のように半透膜で隔ててみてください。
半透膜とは水分子のように小さな粒は通すけれど、溶けている大きな粒は通さない膜のことです。
この半透膜で2つの濃度の異なる水溶液を隔てると、下図のように均一の濃度に揃えようという働きが生じます。
その結果、水分子だけが移動していき、濃い水溶液の水かさは増え、薄まりますよね。
そして、元の水面の位置よりもかさが増えたぶんの圧を『浸透圧』と言います。
半透膜で2つの濃度の水溶液を挟めばこのような現象が起こるということをまずは頭に入れてください。
2.ナメクジに塩をかけると
濃度を薄めようというという作用が働くということについては何となくでもお分かりいただけたと思います。
では、実際にナメクジに塩をかけてみましょう。
人間のように皮膚がないナメクジは、表面が半透膜になっています。
ちなみに人間は体内の水分が出ていかないように、表皮が覆ってくれているので水分をほとんど通しません。
皮膚に覆われていないナメクジに塩をかけてしまうと、表面の濃度がとても高くなってしまいますよね。
すると濃度をなんとか下げようと表面の半透膜を通じて、体からどんどん水分が出て行ってしまうのです。
そのため、ナメクジは体から水分が奪われ消えてしまうのではなく、脱水し死んでしまうのです。
ここで塩でできるんだったら、砂糖でも同じことが起きるのではないか?
と思われた方も多いのではと思います。
確かにその通りです。
しかし、塩の方がナメクジを小さくすることはできます。
では、それはいったいなぜなんでしょうか?
3.塩と砂糖の違い
1リットルの水に溶けている物質を分子量でわったものを『モル濃度』と言います。
塩はNaClと表すことができ、分子量は58.4です。
つまり、1モルの濃度の食塩水を作るには、食塩を水1リットルに対して58.44 g溶かせばできます。
一方で、砂糖はどうでしょうか?
砂糖の主成分はスクロースと呼ばれる糖です。これを化学式で書けば、C₁₂H₂₂O₁₁ となります。
そしてその分子量は342.3です。食塩に比べればかなり分子量が多いことがわかります。
では、1モルの濃度の砂糖水でも作ってみましょう。
砂糖で1モルの濃度の砂糖水を作ろうと思えば、1リットルあたりに342.3 gも溶かさなければいけません。
同じモル濃度の場合、浸透圧は同じになります。
つまり、同じ浸透圧にするためには、砂糖の方がはるかに多く溶かす必要があることになってしまいますよね。
その結果、食塩の方が圧倒的に砂糖よりもナメクジを縮めることができます。
食塩は食べれる物質の中で最もこの作用を大きくすることができる物質です。
そのため、昔から食料の保存にも食塩が使われてきました。
微生物の水分も奪い、やっつけてくれるので腐敗を防ぐことができるからです。
では次に、海水を飲んではいけない理由を説明しようと思います。
4.海水を飲んではいけないのはなぜ?
もし、無人島に取り残されたら、まず生き残るためには水分が必要ですよね。
海があるから水には困んないよと思うかもしれません。
しかし、海水を飲めば余計にのどが渇いてしまうので海水は飲料水としては扱うことはできません。
もし、海の水を飲もうとするのならば一度煮沸し、その時発生した水蒸気を回収、水として飲むという方法が考えられます。
ただ水を飲むだけなのに大変ですよね。
何故こんなことをしなければ海水を飲めないのでしょう?
腎臓の働きによって血液は一定の塩分濃度をが保たれています。
もし、人間の塩分濃度よりもはるかに高い海水を飲むと血液の塩分濃度がどんどん高くなることになります。
この血液の塩分濃度を薄めるには水分が大量に必要となってくるので、逆に体がどんどん水分を欲するのです。
また、血中の塩分濃度があがることで、細胞からも水分を奪ってしまうことになります。
そのため、海水を飲みすぎれば最終的に腎臓も機能しなくなり人は死んでしまうのです。
お分かりいただけたと思いますが、たとえ無人島に取り残されてもそのまま海水は飲んではいけません。
悪循環にに陥ってしまうんですね。海の上で遭難などすれば、目の前にたくさん水があるのに生き地獄です、、、
5.さいごに
ナメクジに塩をかけると、縮む理由はお分かりいただけたかと思います。
塩をかけられたナメクジは体の水分が奪われ、脱水して死んでしまっていたわけですね!
ただ、それを確かめるためにナメクジに塩をかけるのはやめてあげてください。
セロハンなどを使えば同じような実験をすることはできます。
YouTubeで今度挑戦してみます!
お楽しみに