水に氷を入れると浮かびます。氷は個体なのに水に浮くのです。当たり前のこと過ぎて気づきにくいかもしれませんが、このことは実に不思議なことなのです。
どうして氷は水に浮くのでしょうか。
氷は個体であるにも関わらず、なぜ密度が低くなってしまうのでしょうか?今回は氷が水に浮かぶ理由を説明していこうと思います。
1.浮かぶということ
あなたが空っぽのペットボトルを水に沈めようとしても、沈まずに浮いてくるはずです。なぜなら、ペットボトルの中には空気が入っており、同じ体積で比べた時に軽い、つまり、空気は水よりも密度が小さいから浮くのです。
また、軽ければ浮くというのは何も水の中のお話だけではありません。空気中でも同じことが起きます。
ヘリウムの入った風船は空気中をぷかぷかと浮かんでいきますよね。これは、空気よりもヘリウムが密度が小さいから浮かんでいくということです。
つまり、氷が水に浮かぶということは氷の方が密度が小さいということになります。氷は個体であり、水分子が集まってできているので、密度が高くなって重くなりそうなのですが、不思議ではないでしょうか。
2.氷が水よりも軽いのはなぜ?
氷は水分子が集まってできた個体の状態であるにも関わらず、どうしてこのような違いがうまれるのでしょうか?それは、氷を形成する水分子たちの結合様式に秘密があります。
まず、水分子は以下の図の様に、くの字に折れ曲がった構造をしています。
液体の状態ではこの水分子がきっちりと並んでいるわけでなく、回転したり、揺れ動いたりしている状態となっています。しかし、エネルギーが少なくなる、つまり温度が下がってくると、水分子たちはおとなしくなり、集まろうとします。
そして、0℃に差し掛かると、水分子たちは水素結合によって繋がり、結晶構造を形成し始めるのです。それこそが氷です。その氷の状態では、水分子が⇩のように水素結合によって互いが繋がっています。
※白:水素原子 赤:酸素原子 点線:水素結合
水分子たちが綺麗に並んでいますよね。また、青色で示した部分⇩は正四面体構造であり、このような構造がたくさん連なっているのです。
ここで気づいた方もおられるかもしれません。なんだか隙間が多くないですか?そうです!氷はこのような結晶構造を取るため、隙間が多く空気が入り込み、水よりも密度が小さくなるのです。
思い出してください。水を凍らせた時に体積はどうなるでしょうか?体積は増えると思います。ペットボトルに水をパンパンに入れて凍らせると冷凍庫で破裂してしまいますよね。
それは、水分子がこのような隙間を多く持った構造になるため、体積が増えるのです。水を凍らせると体積が増える理由と、氷が水に浮かぶ理由は同じなんです。
また、補足として1番水の密度が高くなるとことは4℃の時です。つまり、凍る直前の集まってきた時が1番重くなります。
3.さいごに
通常、個体は分子が集まって結晶構造をとったものなので、密度は大きくなります。例えば個体のろうそくは液体のろうそくの中に沈みます。ほとんどの物質がそうなのであり、実は氷は特別な存在だったのです。液体の方が密度が大きいものを異常液体と呼びます。
ではもし、氷の方が密度が高く水に沈んでしまうとすればどうなるでしょうか?
湖が凍ってしまったとしましょう。すると、中にいる魚たちは氷に押しつぶされて大変なことになりますよね。氷が水よりも軽くて良かった。
また、氷の構造を見て、気づいた方がおられるかもしれません。その構造には6角形が含まれていますよね!これは重要なポイントで、雪の結晶が基本的には必ず六角形であるということにも繋がるのです。
雪の結晶についてのお話は後日、したいと思います。
雪の結晶の記事⇩
当たり前のことの中には実はたくさん疑問が含まれていたりします。ぜひ皆様も日常に潜んでいるこのような疑問を探してみて下さい。それが科学に繋がるはずです。学生の皆様にとってはそれが自由研究の題材となったりしますよね。