皆様、ヤモリをご存知でしょうか?よく壁にくっ付いているトカゲの仲間で、とっても可愛いですよね?
たまに扉を開けたと同時に頭の上や肩などに落ちてきてびっくりさせられますけど(笑)
そんなキュートなヤモリは害虫を捕食するため、「守宮」や「家守」と漢字で書きます。
漢字の通り、昔から家を害虫から守ってくれているわけです。気持ち悪がらずに感謝しましょう。
日本で見られるヤモリはニホンヤモリであり、一番初めの記事⇩で紹介したイラガように、人の多い都市部や住宅街の方が多く見られるのです。
~自己紹介記事~
そんなヤモリですが、足にはタコみたいな吸盤を持っていませんし、カタツムリみたいにねばねばしていませんよね?
では、どうして壁にくっつけるのでしょうか?
似たようなトカゲは壁にはくっつけないのに!不思議に思ったことはありませんか?
思ったことが無ければ、今から思いましょう!
実はこの疑問の答えは、ヤモリの足にあるんです。
ヤモリの足には私たちの目では見れないくらいもの凄く小さな毛が生えており、その毛と壁に『ファンデルワールス力』というとても弱い力が働くことで壁に引っ付くことができるのです!
ここで多くの皆様が、いやいや『ファンデルワールス力』ってなんだよとなると思います。
なので、今回はのヤモリがくっつける秘密の鍵となる『ファンデルワールス力』について、簡単に説明していきたいと思います。
1.ファンデルワールス力
『ファンデルワールス力』とは、簡単に言えば分子同士に働く弱い力です。
分子とは原子の集まりです。
そして、下図のように原子の中心には陽子(+)と中性子からなる原子核があり、その周りには電子(-)が周っています。
一方向から見た場合、周っているということは裏側に周っていってしまったりして、時に電子は見え隠れしている状態になりますよね。
図で言えば右側から見れば、電子は原子核に隠れていると言えます。
地球の周りに月が周っているところを想像してください。
月は常に見えていませんよね。
同じように原子の周りの電子は周っているので、原子核内の陽子(+)が見え隠れしています。
そして、分子同士が近づき分子の持つ原子同士が近づくと、この+と-が引かれ合います。
まさしくこの引かれ合うことで生じる分子間の弱い力、それこそが『ファンデルワールス力』なのです!!
この引き合う力は1つ1つはとてつもなく弱い力なのですが、沢山あればあるほど強い結合となるのです。
例えばわかりやすい例をあげますと、2冊のノートのページを1枚ずつ重ねて見て下さい。
小学生の時にやった方も多いかもしれません。
まだ重ね始めて始めの方はすぐに抜けるくらい弱い力ですが、ページが多く重なれば重なるほど力は強くなり、引っ張っても抜けなくなりますよね。
小さな摩擦力もたくさん集まれば大きな摩擦力を生みます。
まさに感覚としてはそれと同じで、このような弱い力『ファンデルワールス力』を利用し、ヤモリは壁にくっ付くことができているのです。
では、どのようにしてヤモリはファンデルワールス力を使っているのでしょうか?
2.ヤモリのファンデルワールス力
最初に言いましたが、ヤモリの足にはもの凄く小さな毛が沢山生えており、4本の足の毛の数を合わせると約650万本もの毛がはえているそうです。
すべての物質は原子でできていますから、ヤモリの毛もくっつく側の壁も原子です。
そんな毛を持つヤモリが壁にくっつこうとすれば、1本1本の細かい毛の原子が壁の原子と相互作用することになります。
つまり、ヤモリはこの沢山の毛を上手く利用し、壁に対してこのファンデルワールス力をはたかせることでくっ付いて落ちないようにしているのです。
細かくて細い650万本の毛の一本一本が壁の原子と引き合っているのですね。
先ほども説明したように弱い力でもたくさん集まれば強い力になります。
ここで疑問を持つ方がおられるかもしれません。
一度くっ付いてしまうと離れなくなるのでは?と
そんなことになってしまっては外敵に襲われてしまうので大変ですよね。
そもそもいろんなところにくっついちゃいますし!
そこで、ヤモリは外側に曲がる手を使い器用にこの毛を動かすことでファンデルワールス力を順番に無くしていき、離れてはまたすぐにくっ付けるそうです。
イメージとしてはぺりぺり剥がせるテープのような感じですかね。見かけによらず器用なやつらです。
そして、実はこのファンデルワールス力を利用したテープや医療品などの商品も開発されているのです。
もちろんヤモリの手を完全に真似できているわけではありません。
真似しようともここまで細くて大量の毛は現代の技術では未だに作ることができていないのが事実ですが、これから技術が発達しいずれあのくも男みたいに壁を自由に登ったりできるスーツができると楽しそうですね。
3.さいごに
進化論を提唱したダーウィンによれば、生物は予期しない突然変異により、自然淘汰されていき、今の姿になったとされています。
簡単に言うと、突然変異によって体の形や色などが変わり、それがたまたま生き残ることに他の個体よりも有利だった場合、その個体が生き残って今の姿になっていった。
ということです。
ヤモリたちもファンデルワールス力を使い他のトカゲたちよりも高い所の餌を確保したり、逃げたりすることができる個体がたまたま多く残っていった結果、今の形になっているわけですね。
生物たちは多種多様であり、とても魅力的です。
まぁ、ヤモリは誕生してから現代までに、何度かこの力を得たり、無くしたりしているそうですけど、、、、
とにかく人の科学の歴史よりも遥か昔から、生物たちは生き残る技を受け継いできたわけです。
これを参考にしない手などありません!
現在では沢山の生物からヒントを得た技術が開発されています。
今後、そんな技術も調べて紹介していければと思います。
【4コマ劇場】ヤモリ先輩の師匠!
まだ読んでいない方はぜひ読んでみて下さい。
【お勧めの生物の本】