一時期、酵素ドリンクというようなものが流行り、『酵素』自体に注目が集まりました。
そもそも、酵素とはいったい何かご存知でしょうか?
皆様は酵素のことをちゃんと知って飲んだり、食べていますか?
世の中には適当な酵素の知識も多く溢れているため、その情報が自分で合っているかどうかを判断しなければいけません。
以前、
という記事を書きました。
そこでは、酵素の働きについて簡単に触れています。
今回の記事を見ていただいてからもう一度見ていただく方が、さらに理解を深めていただけるのかと思います。
そんな酵素ですが、皆様は酵素についてどのようなことを知っていますか?
酵素について間違いなく言えることがあります。
それは、生きるためにはなくてはならない存在であるということです。
大学院時代は酵素の研究をしていた私が、簡単に酵素とはどのような存在なのか、なぜ、必要なのかを説明していきたいと思います。
1.酵素
酵素はアミノ酸がたくさん連なり、立体構造を持つタンパク質です。
つまり、酵素とはタンパク質なのです。
そして、最も重要な酵素の働きとは、化学反応を触媒するということです。
また、酵素は基質特異性と反応特異性を持っています。
いきなり難しい言葉だらけなので、一つずつ簡単に説明していきましょう!
2.触媒
『触媒』とは、化学反応を速めてくれる働きのことを言います。
化学反応は何もなければゆっくりと進むことが多いです。
それは、化学反応を進めるためには、エネルギーが必要だからです。
もっとかみ砕いて説明することにします。
ある物がくっついたり、分解したり、形を変えようとしているとします。
物はひとりでに変わるでしょうか?
変えようとする力が必要になってきますよね。
化学反応も同じというわけです。
ある物質が異なる物質に変わるためには、エネルギーが必要なのです。
今回、この必要なエネルギーを壁に例えることにします。
化学反応を進めるにはエネルギーが必要ですよね?
つまり、壁を登らなければなりません。
先ほど、触媒とは化学反応を速めてくれる働きと言いました。
触媒はこの壁を低くし、化学反応を速めてくれるのです!
高い壁を乗り越えるよりも、低い壁の方が乗り越えやすいですよね!
触媒とは、化学反応に必要なエネルギーを下げて、反応を速めてくれます。
つまり、酵素はこのような触媒作用を持っているのです。
そして、体の中では生きるためにエネルギーを作ったり、消化するために分解したりなど、常にたくさんの化学反応が起こっています。
酵素はこのたくさんの化学反応を触媒してくれるので、生きるためには欠かせない存在といえるのです。
では、次に出てきた難しい言葉、基質特異性と反応特異性とは何なのでしょうか?
3.基質特異性・反応特異性
酵素は触媒作用を持っているということはお分かりいただけたかと思います。
では、どんな反応も速めてくれるのでしょうか?
その答えはNOです。
酵素は鍵と鍵穴のように、その酵素にあてはまる基質の化学反応しか触媒しません。
ちなみに基質とは、化学反応の起こる前の物質を示します。
また、この鍵と鍵穴の関係を『基質特異性』と呼んでいます。
なんでもかんでも化学反応を速めてくれるわけではなく、酵素は自分の鍵穴にあった鍵の反応のみを速めることができるのです。
そして、生体内には様々な種類の酵素が存在し、その一つ一つが違った化学反応を触媒してくれているのです。
このように酵素一つ一つが違った反応を触媒することを『反応特異性』と呼んでいます。
4.酵素ドリンク
酵素は触媒作用を持つため、私たちが生きる上で必要な存在であることは間違いありません。
では、酵素ドリンクと呼ばれる酵素が含まれたドリンクを飲めば、酵素が体に吸収され、手助けしてくれるんだ!
そう思う方が多いのではないでしょうか。
しかし、この認識は正しくありません。
一番初めに酵素はタンパク質であると言いました。
一部の例外を除くタンパク質は、熱や酸などによってその働きを失ってしまいます。
酵素が働きを失うことを『失活』と呼び、口から摂取したとしても胃から出る強酸の胃液の働きによって酵素は失活し、そのほとんどが分解されてしまします。
また、吸収されるとしても、大きなタンパク質を腸でそのまま取り込むことはできません。
最終的にはアミノ酸やペプチドの状態にまで分解されることで体に吸収されるのです。
つまり、そのままの状態では酵素が体に取り込まれることはないので、酵素が吸収され働くことはありません。
生酵素など様々な酵素がありますが、酵素ドリンクなどは体に必要なアミノ酸を摂取している、という認識の方が正しいかと思われます。
アミノ酸ならわざわざ酵素ドリンクのような高価なものを飲む必要があるのでしょうか?
そこはご自身でしっかり考えて判断すべき点であると思います。
生酵素などが人気になっているのは私には理解できません。
5.さいごに
身の回りには科学があふれています。
また、それと同時にニセ科学なるものも溢れています。
きちんとその原理を理解し知ることは、自分の身を守ることにもつながりますし、さらなる発見にもつながります。
世の中には間違った科学の認識も沢山あるので自分でその良し悪しを判断しなければいけません。
学ぶということは自分の身を守るということにも繋がるのです。
販売する側も購入する側もしっかりとした知識を付けなければいけません。
そのためにも学ぶことを楽しいと思える世の中になって欲しいものです。
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