皆様こんにちは!サイエンスコミュニケーターのくもMです。今回は12月12日に山口大学へ『カブトムシ』の研究をされている先生に取材させていただいたお話をします。
いざ、山口大学へ
山口大学へは新大阪から新幹線で約2時間をかけ、乗り換え無しで新山口へ行ってから、JR山口線に乗り換えて湯田温泉へと向かう必要があります。
新山口からの乗り換えで、在来線はある程度の区間新幹線のチケットを持っていれば、乗っていけるところが多いですが、湯田温泉へは240円が必要でした。
湯田温泉駅には乗り越し精算機も改札機も無かったため、駅員さんに「このチケットでここまでいけますか?」と確認したところ、「240円払ってください。」と言われたわけです。
電車はワンマン電車で、2両編成。新山口駅から湯田温泉駅までは約19分の道のりで、ところどころの駅で1両目の車両しか扉が開かないというのはなかなかびっくりでした。
始めて乗る人がずっと2両目で降りようとしていて、周りの人が親切に教えてくれている優しい世界。きっと私も2両目の扉が開かない駅であれば、同じ感じになったと思います。
新山口駅はとてもきれいで、広く、いかにも新幹線の駅といった印象を受けましたが、湯田温泉駅はThe田舎という駅で、大きな白い狐のオブジェが改札を出た瞬間私を迎えてくれました。
この地の温泉は白い狐が温泉を見つけたお話からこのようなオブジェが作られているそうで、駅近くのポストも白い狐でした。これはなかなかにかわいい。
新山口から歩くこと20分。山口大学が見えてきました。
撮影が13時~で、湯田温泉駅に到着したのが11時。少し時間があったので撮影前の腹ごしらえをしようとご当地のラーメンか名物が食べられそうなお店を探しましたが、本当になんにもありません。
仕方なく大学前にあったココ壱番屋のチキンカツカレーを頂きました。久々のココイチでしたが、なかなかに美味しい。撮影前の気持ちを入れ直すことができました。
構内は広いが道は狭い
撮影まで少し時間があったので、山口大学の中を散策することに。
綺麗な図書館やカフェ、なんと金ぴかの鯉が泳いでいる池なんかもありました。こんな池は色んな大学に行ってきましたが見たことありませんでした。すごく広々とした大学構内で、学生さんは自転車に乗っている率が高く、皆さん遠くから通うっているのだろうか。
ただ、広々とした構内ではあるのですが、道は少し狭い印象を受けました。車は一方向しか通れず、少しその辺りは不便ですね。
その奥の奥に位置しているのが今回取材させていただく先生がおられる総合研究棟。看板をみるとすぐそこのように書いてありましたが、意外とそこからさらに奥に行かないとたどり着けないため、少し迷ってしまいましたが、なんとか時間通りにたどりつくことができました。
広島大学の撮影でもお世話になったカメラマンさんと合流し、いざ4階の先生のお部屋に向かいます。
カブトムシの研究者 小島渉先生
本日、くもMLABの取材をさせていただくのはカブトムシの不思議な生態を明らかにしようと日々研究されている山口大学理学部の小島渉先生です。
なんと小島先生は生駒で小、中学生時代を過ごされたそうで、同郷ということでじもとーくもできちゃいました。
小島先生はカブトムシの成虫から蛹、そして幼虫までいろんな研究をされているカブトムシのスペシャリストで、今回は本当に素敵なお話をたくさんしていただきました。
カブトムシを捕まえようと日中探し回ってもなかなか見つけることはできませんよね。そのため、これまでカブトムシは夜行性と考えられてきました。
しかし、最近小島先生の発表した研究によれば、カブトムシは夜行性というわけではなく、餌場となる樹液がでているところに朝までいると、オオスズメバチがカブトムシを投げ飛ばしてしまうので、居たくても居れないから夜行性になっているかもしれないというのです。
先生は朝方カブトムシたちが集まる餌場にやってくるオオスズメバチをスプレーを使って人為的に退けるという実験を行った結果、スズメバチが来なかった場合にはカブトムシは昼ごろまで餌場に居続けました。
オオスズメバチがあのカブトムシを投げ飛ばしてしまうのは驚きですし、生き物の相互作用によってこのようなカブトムシの生態が変化しているというのはとても面白いですよね。
まだまだたくさんカブトムシの面白い研究を語っていただきましたので、後の研究のお話はくもMLABの動画をぜひご覧になってください。
公開は1月か2月予定
カブトムシの幼虫掘り
研究のお話をしていただいた後、山口大学でもカブトムシの幼虫が採れるスポットが何か所かあるということで、カブトムシの幼虫掘りに連れていってもらいました。
カブトムシの幼虫は意外にも人の手の加わった場所にたくさん生息しています。例えば落ち葉がたくさん集められた場所や、木を細かく切ったウッドチップが積み上げられた場所など。
落ち葉やウッドチップは細菌によって分解されることで、カブトムシの幼虫の餌となります。人がこのような場所を作っていなければ、カブトムシの幼虫の餌はあまり無くなってしまうので、カブトムシは人の生活と密接に関係した生活をしているのです。
先生は何か所かこのような場所に連れて行ってくれました。しかし、掘っても掘ってもカブトムシの幼虫は見つからない。昨年はたくさん発見できた場所でも、糞やハナムグリの幼虫を見つけることはできても、カブトムシの幼虫は見つけることができませんでした。
幼虫は1匹見つかると、同じ場所にたくさん集まっているため、何匹も見つかるそうですが、今回は4か所回っても1匹を見つけることができません。
そこで、先生のとっておきの場所に行くことに。
ここは飼育しているカブトムシの腐食土を変える時に出た残りを積み上げた場所であり、確実にカブトムシの幼虫が居るそうです。
早速先生がスコップで腐食土の山を切り崩していくと、大きなハナムグリの幼虫がいました。結構大きかったので、思わず僕はあ!と声を出してしまいましたが、残念ながら目的のカブトムシの幼虫ではありませんでした。
しかし、先生がさらに先を切り崩していったその瞬間でした。まんまるとした白いものが顔を出したのです。
まさにこれはカブトムシの幼虫!ハナムグリの幼虫と比べると大きさは一目瞭然であり、まったく別モノでした。そして、先生の言った通り近くにさらにもう一匹も見つけました。
カブトムシの幼虫は二酸化炭素に反応して、お互いに近づいて生息しているそうです。
とれ高は十分!先生も私も少しほっとしました。
先生の趣味はバードウォッチング
カブトムシの幼虫を採取すると同時に行っていたのがバードウォッチングです。
小島先生は幼いころからバードウォッチングが趣味で、これまでたくさんの鳥を観察してこられたそうです。
今回の撮影では、たまたま冬鳥であるアトリに出会うことができました。先生曰くレアな鳥で、今回観察できたことは運が良いとおっしゃっていました。
そして、彼らを追いかけていた時に、木に止まって実を食べている姿を観察することができました。
この木になっていた実はアトリに比べても大きく、先生も食べるとは思っていなかったそうです。
丸吞みにするのではなく、実のまわりをかじるように食べている姿を観察することができました。全部食べるわけでは無く、途中まで食べたら落っことしていました。
先生も知らなかった新たな生態を観察することができ、本当にラッキー。ただ、バードウォッチングは知識のある人と行かないと本当にわからないですね。
さいごに
無事にカブトムシの幼虫を採取でき、珍しい鳥にも出会えた最高の撮影となりました。
先生のお話をうかがい、カブトムシがこんなにも人間の生活と密接な関係にあり、知らないだけで身近な場所にもたくさん生息しているということは本当に驚きでした。
また、こんなに人気でたくさんの人に飼われているカブトムシにもわかっていないことがたくさんあるんだということを知り、もっとカブトムシについて調べたくなりました。
ぜひ皆様も今回の先生のインタビュー動画、そして先生の著書をごらんになってカブトムシのことを知ってみてください。
撮影にご協力した下さった山口大学理学部小島渉先生、本当にありがとうございました。
また、小島先生をご紹介下さった静岡大学理学部の後藤先生、撮影を担当してくださったまつけんさん、ありがとうございます。